米国株は22日のFOMC次第で急落の可能性がある もはや重要なのは「テーパリング開始」ではない
FRBのジェローム・パウエル議長はできる限りテーパリングの開始を遅らせたいと考えているのかもしれない。だが、ここまでインフレ圧力が高まった以上、早期のテーパリングを求めるタカ派的なFRB理事や地区連銀総裁を説得し、決定を先送りするのは難しいだろう。今回のFOMCで開始決定となれば、その時期は10月、あるいは11月からになると思われる。
もっとも市場の注目は、もはや「いつテーパリングが始まるのか」ではない。むしろ、現在の1200億ドルの購入額(同国債が月800億ドル、住宅ローン担保証券400億ドル)をどの程度のペースで縮小し、テーパリングをいつまでに終了するのかに集まっている。
例えば、月100~120億ドルという、比較的ゆっくりとしたペースなら、終了は2022年の夏以降となってしまう。だが月200億ドルに近い、速いペースで進めるのなら来年の上半期中にテーパリングが終了することになる。今後の金融市場の動向を占ううえで、テーパリングのペースがどの程度の速さになるのかが、大きなカギを握ることは間違いない。
仮にテーパリングが速いペースで進み、夏までに終了なら、当然ながら2022年末までに政策金利を引き上げるのではとの見方も強まってくる。パウエル議長は先月のジャクソンホールで行った講演でも「テーパリングと利上げは全く別物」と、早期にテーパリングを開始した場合でも利上げ転換はまだまだ先になるとの見方を強調していた。
だが、市場はそうは考えないだろう。少なくともテーパリングや利上げといった金融政策方針は、雇用の拡大と物価の安定という、FRBの目標(デュアル・マンデート)を達成するために行っているのであり、当然ながらどちらも雇用や物価に関する経済指標に基づいて判断されることになる。
テーパリングを早期に行う準備が整ったということは、利上げ転換の時期もその分早くなると考えるのが自然というものだ。来年末までの利上げ転換が視野に入ってくるようになれば、市場もそれなりの反応を見せざるをえなくなるだろう。
市場が「2022年末までに利上げ」と読めば株価急落
その点で見れば、次回のFOMCでは声明でテーパリングの決定を発表するのかよりも、同時に発表されるFRB高官に対する聞き取り調査で、ドット・チャートと呼ばれる将来の政策金利予想をどのように変化するのかのほうが重要な意味を持ってくるのかもしれない。
前回6月の発表では、FRB高官のうち18名中7名が、2022年中に少なくとも1回の利上げがあるとの見通しを示していた。これが今回の発表で2名以上増えて過半数を超えるようになれば、市場も本格的に早期の利上げを織り込みにかからざるをえなくなるだろう。
アメリカのCMEグループが、短期金利先物市場の動向を基に算出しているFRBの政策金利予想である「フェドウォッチ」(FED Watch)によると、2022年12月のFOMC時点で利上げが行われている可能性を、市場はすでに60%近く織り込んでいる。
今回のFOMCやドット・チャートの内容次第では、市場は利上げの可能性を100%近くまで織り込むようになることもありうる。その際には同国の長期金利にさらに上昇圧力が強まるのは避けられない。
足元は中国の不動産大手・恒大集団の問題もあり、株価は下落基調だ。ここまで最高値を何度となく更新してきたアメリカの株式市場に、大幅な調整が見られることになっても何ら不思議ではないし、それに対する準備も怠るべきではない。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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