
短いのに「いちばん読んでもらいたい本」
『方丈記』は日本の古典の中で、皆さんにいちばん読んでもらいたい本である。なにより全体がごく短い。原稿用紙にして25枚と聞いたことがある。ごく短い文章の中に、現在実際に起こったとしたら、とてつもない大事件になるようなことが、次々に淡々と描かれている。都の火災、養和の飢饉、大震災など、政治的な背景は源平の合戦、福原への遷都、京への帰還など、それぞれを描いても長編文学になって不思議はない。
短い生涯の間に、こうしたことすべてを身近に経験してきた鴨長明の晩年の思い出話がこの『方丈記』である。鴨長明が生きた時代は、日本のすべての転換期だった。私はそう思う。
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【すべてのものは移り変わり、とどまることはない】
