方丈記に描かれた5大災厄が映す諸行無常の本質 養老孟司が「一番読んでもらいたい古典」と言う訳

拡大
縮小
(©漫画:信吉/文響社)

短いのに「いちばん読んでもらいたい本」

『方丈記』は日本の古典の中で、皆さんにいちばん読んでもらいたい本である。なにより全体がごく短い。原稿用紙にして25枚と聞いたことがある。ごく短い文章の中に、現在実際に起こったとしたら、とてつもない大事件になるようなことが、次々に淡々と描かれている。都の火災、養和の飢饉、大震災など、政治的な背景は源平の合戦、福原への遷都、京への帰還など、それぞれを描いても長編文学になって不思議はない。

短い生涯の間に、こうしたことすべてを身近に経験してきた鴨長明の晩年の思い出話がこの『方丈記』である。鴨長明が生きた時代は、日本のすべての転換期だった。私はそう思う。

次ページすべてのものは移り変わり、とどまることはない
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT