日本にも影響「ドイツ総選挙」でこう変わる 16年間続いたメルケル政権がついに終幕へ
――ドイツ経済は中国依存度が高まっています。
2020年のドイツの輸出額を見ても、対中国と対アメリカが同程度で、EU域外では2大市場となっている。フォルクスワーゲンなどドイツの主要自動車メーカーの中国での販売台数は全世界の3~4割を占めるほどだ。メルケル政権が進めた政策における最大の特徴の1つが、中国、ロシアとの経済関係の強化だった。
ただ対中関係については、中国の国家資本主義の世界的影響力が増し、権威主義的傾向が強まるにつれ、依存を高めすぎたという認識も広がっている。産業界には、技術移転の強要や補助金による競争条件の歪み、市場アクセスの不均衡への不満もある。
メルケル首相がEU議長国として中国との「包括投資協定(CAI)」の取りまとめに尽力したのも、こうした問題の改善の糸口にするためだった。CAIは2019年12月に大枠合意したが、EUでの批准手続きは人権問題に厳しい立場をとる欧州議会により停止されている。人権侵害の批判に中国は妥協しない構えで、膠着打開のメドは立っていない。
――前回の総選挙で旧東ドイツ中心に勢力を広げ、野党第1党になった極右政党AfDの動きはどうですか。
支持はそれなりに固く、今回もある程度の議席を取りそうだ。ただ、どの主要政党もAfDとは連立を組まない方針であり、政策への直接的影響力は限定される。
前政権の改革の恩恵を受けたメルケル時代
――メルケル政権を総括して、どう評価していますか。
ドイツ経済はユーロ危機など厳しい外部環境の中でも、相対的に良好なパフォーマンスを続けてきた。失業率や財政は、メルケル政権の前に比べて大きく改善している。
だが、雇用や財政の改善に道筋をつけたのは、シュレーダー政権期の社会保障と労働市場の一体改革「ハルツ改革」にある。メルケル政権はその改革の恩恵を受け、さらに競争力の低い南欧などと共有する単一通貨ユーロの割安化に支えられ、中国の成長を取り込むことに成功した。
しかし、ユーロ圏内での格差拡大に歯止めがかからなければ、ユーロの持続可能性への懸念が再燃するだろう。経済安全保障の観点からも、中国への過度の依存を見直す必要に迫られている。ドイツ経済は自動車を中心とする輸出産業が牽引してきたが、脱炭素化の実現には、ものづくりのあり方も変わらざるをえない。欧州での独り勝ちを支えた圏内格差、中国依存、ビジネスモデルが修正を迫られており、次期政権はこれらの課題に向き合わなければならない。
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