日本にも影響「ドイツ総選挙」でこう変わる 16年間続いたメルケル政権がついに終幕へ

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――どのような連立政権のシナリオが有力でしょうか。

シナリオの順位付けをするのは非常に難しい。世論調査ではSPDが支持率第1位となるケースが増えており、「SPD+緑の党+アルファ」の3党連立という可能性が出てきている。ただ、このアルファが親ビジネスのFDPとなると、環境左派である緑の党と相容れない部分が大きい。

アルファが左翼党(Linke)で「左派3党連立」となる可能性もなくはない。SPDや緑の党もその可能性を否定していない。しかし、SPDはNATO(北大西洋条約機構)とEU(欧州連合)の肯定が前提とする一方、左翼党は軍事同盟であるNATOを支持しないと明言しており、決定的なイデオロギー対立がある。

一方、CDU/CSUとFDPの2党連立は、財政の考え方や企業の負担軽減、イノベーション重視の気候変動対策など方向性が一致しており、自然な組み合わせだ。しかし、過半数の議席に届かない可能性が高い。ここに方向性の違う緑の党が加わるという組み合わせは、前回の総選挙後の連立協議でも頓挫しているので現実化は難しい。

――CDU/CSUとSPDの連立政権が続く可能性はどうですか。

今回は過半数に届かない可能性がある。しかも、過去16年のうち12年が大連立政権だったことで、有権者の選択の意義が低下し、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の台頭を許すなど弊害が出ている。本来避けるべきシナリオだ。SPDは、少なくともジュニアパートナーとして大連立に加わることは望まないだろう。

緑の党が躍進すれば対中強硬化も

――政策の変化度が大きいというシナリオはやはり左派連立でしょうか。

とくに緑の党の影響力が強い左派連合になった場合には、財政スタンスの変化が注目される。欧州債務危機を経て、EUの財政ルールはドイツ主導で緊縮バイアスが強い方向に修正された。成長のための投資が足りない構造的要因ともいわれる。緑の党の影響力が強まれば、ドイツがEUの財政ルールの成長志向への修正を主導することも考えられる。

また、緑の党は中国、ロシアに対して現政権よりも厳しいスタンスだ。メルケル政権が進めたロシアとドイツを結ぶガスパイプライン「ノルドストリーム2」の支持撤回を主張、中国の人権侵害には制裁も辞さない構えだ。

ただし、緑の党が第1党になるのは難しいだろう。緑の党の支持は旧東ドイツ地域では弱い。ベアボック氏の首相候補としての適格性も疑問視される。緑の党が連立政権の一角に加わり、影響力を発揮する可能性は高いが、連立協議によって政策はより現実的で穏健なものに落ち着くだろう。

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