岸田氏が出馬表明、自民総裁選に「大激戦」の予感 9月29日投開票、党員・党友含めた本格選挙に

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さらに、新首相がコロナ対策のための補正予算を国会提出した場合、成立までに最低1週間以上は必要なため、10月21日の衆院任期満了ぎりぎりの解散断行で、「解散から40日以内」との規定により最も遅い場合は11月28日投開票も可能となる。

つまり、衆院選の時期は総裁選の結果次第で大きく変わり、9月以降のコロナ感染状況が総裁選結果や衆院選日程を左右する可能性が大きい。このため党内では「これから1カ月は何が起こってもおかしくない」との声が広がる。

菅首相を窮地に追い込んだのは、22日に投開票された横浜市長選で支援した小此木八郎前国家公安委員長が惨敗したことだ。翌日、官邸で記者団の質問に応じた菅首相は「大変残念な結果だ。謙虚に受け止めたい」としながらも、「時期が来れば(総裁選に)出馬するのは当然だという考え方に変わりはない」と総裁選出馬を明言した。

記者会見で続く答弁メモの棒読み

25日夜の記者会見では「明かりははっきりと見え始めている」とワクチン接種の加速と中和抗体薬の幅広い活用などによるコロナ感染の早期収束と医療態勢逼迫回避に意欲と自信をにじませた。

菅首相は後手批判が強いこれまでのコロナ対応についても肯定的に評価した。ただ、発信力不足については「私の言葉について厳しい指摘を頂いた。しっかり受け止め、真摯に対応していきたい」と神妙な表情で頭を下げた。ただ、これも答弁メモの棒読みで、会場だけでなく視聴者からも失笑を買った。

総裁選に第3、第4の候補が加わった場合、最大のポイントとなるのは全体の半分を占める党員・党友票の行方だ。「次の首相」人気投票で常にトップ争いを続ける石破、河野両氏が参戦しなかった場合、人気では低迷する菅、岸田両氏のどちらに票が集まるかは「やってみなければわからない状況」(閣僚経験者)だ。

ただ、ネット上で「#スガ以外」のハッシュタグが話題になるように、党員・党友の「菅離れ」が際立てば、衆院選を意識した所属議員による「菅降ろし」にも連動しかねない。二階派以外が事実上の自主投票を余儀なくされれば、議員票も大きく変動する可能性がある。

18日にも予定される日本記者クラブ主催の候補者討論会をはじめ、連日実施されるとみられる各テレビ局やネット番組などで菅首相がどれだけ発信力をアピールできるか。それが総裁選の行方を左右することになりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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