関西に目を向けると大阪市の減少が際立つ。バブル末期には159社で4位に位置していたのが、社数はほぼ半減して、直近では8位に後退している。これには、くすりのまち・道修町近辺に70年代から拠点を置いていた外資の製薬会社が、親会社の再編により続々統合していった影響も大きい。
アストラジャパンとゼネカ薬品(2000年)、バイエル薬品と日本シエーリング(2007年)、万有製薬(メルク)とシェリング・プラウ(2010年)など、統合で社数が半減し、さらに子会社同士の統合も加わる。
関西は神戸が社数5割増、沈む大阪
もちろん社数減の理由はそれだけではないだろう。国内企業ですら東京一極集中の傾向が強まっている。大阪市の拠点を直接東京に移転するという事例こそ確認できなかったものの、進出と撤退の流れのなかで、東京への進出、大阪からの撤退が外資においても進んだ結果とみられる。
ただ、大阪とは対照的に、神戸市は四半世紀のうちに社数は5割増、順位も11位から9位へアップと健闘している。1995年に阪神淡路大震災で甚大な被害を受けたにもかかわらず、神戸を本社とする数は大きく減少することもなく、その後徐々に数を伸ばしてきた。
直近では震災以降に設立された会社が6割を占める。外国人居留地としての長い歴史が培った住みやすさ、ポートアイランドの「神戸医療産業都市」などが高く評価されている。2011年末には「関西イノベーション国際戦略総合特区」にも指定され、政府や自治体の企業誘致への取り組みが奏功している好例といえるだろう。
江東区、千葉県、埼玉県が躍進、首都圏集中は不変
10位の江東区(東京)は伸び率ナンバーワンで23位から躍進した。有明、豊洲の臨海副都心は東京都の「アジアヘッドクオーター特区」にも指定されており、これからも伸びが期待される。千葉県も幕張新都心に本社を置く外資が増えたことで18位から12位へ上昇した。埼玉県はさいたま市と川口市を中心に、輸出入・販売を含めたメーカー系の企業が進出している。
ランキング上位3都市をみても、「外資といえば東京」という首都圏偏在傾向は四半世紀を経ても変わりない。ただ、その内訳には微妙な変化もみられる。
東京都だけを見ると、外資の立地割合はバブル末期の79%から直近76%へと一見拡散したかのようである。一方で、周辺の3県(神奈川、千葉、埼玉)を合わせた首都圏比率は86%から88%に増加している。
首都圏への集中傾向は依然進んでいるとはいえ、鉄道網の延伸などでビジネスの利便性は周辺地域にも広がっている。さまざまな誘致制度、外国人にとっての居住環境、物価の安さなど、多様な外資がそれぞれの選択基準で多様な地域を選択する。成熟した日本経済の姿は外資の動向からもあぶり出される時代となっているようだ。
最後に、おことわりしておかねばならない。調査は小社独自の基準・方法で対象会社を選定し、かつ調査会社の任意の回答に基づくものである。全数調査以外の調査では多かれ少なかれそうではあるが、あくまで傾向を表すにとどまり、実態を正確に反映しているという保証はできないことをご了解いただきたい。
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