攻勢かけるリクルート 人材業界大再編がいよいよ加速

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寡占化進む世界市場 外資も日本開拓に本腰

 ただ、世界に目を転じると、明らかに人材サービス業界は寡占化の方向に進んでいる。07年12月、世界3位のランスタッド・ホールディングスが4位のヴェディオール買収の基本合意に至ったと発表した。買収価格は総額5700億円とされる。買収後の売り上げ規模は2兆円を超え、米マンパワーを抜き世界2位となる見通しだ。こうした外資勢は、群雄割拠を続ける日本市場にも照準を合わせている。

 実際、スタッフサービス買収で最後までリクルートと競ったのがマンパワー社だった。同社のアジア・太平洋地域社長でもあるマンパワー・ジャパンのダリル・グリーン会長は、「経済大国である日本市場の強化は、マンパワー本社の役員会の決定事項。スタッフサービスの買収に関しても相当な額を本社の決定で提示した。結果は残念だが、これは第1回目の挑戦にすぎない。あれほどの規模ではなくとも、ほかの有力案件は数多くある。積極的にトライしたい」と意欲を語る。マンパワーが日本法人を設立したのは66年。日本の人材派遣業の草分け中の草分けだが、近年シェアは低迷。07年に元ボーダフォン日本法人社長のグリーン氏を招聘し、成長、拡大戦略へと舵を切った。

 世界トップのアデコグループ日本法人のマーク・デュレイ会長も、「世界的にみれば日本の派遣労働者比率はまだ低く、拡大余地は大きい。今は事務派遣中心だが、グループ全体でも技術者派遣など新規分野を伸ばす方針を掲げている。積極的に買収を考えたいのはむしろこちらの分野」と語る。デュレイ氏は、来日前は同社米国法人でM&Aを担当。「相手の規模は大きくても小さくても苦労は同じ。ならば大きい案件を狙いたい」と力を込める。

 06年にランスタッドが、07年には米ケリーサービスが日本市場に本格参入するなど、外資勢の攻勢は強まる一方だ。

規模の利益はない自律成長路線の国内大手

 対して、国内大手はそうした動きとは一線を画している。テンプスタッフの篠原欣子社長は、「世界で寡占化が進んでいるのは事実だが、システムの効率化を除いて、人材ビジネスで規模の利益があるとは思えない。弊社に欠けている部門の買収はありうるが、初めに規模ありきではない」と語る。

 パソナグループの南部靖之代表も「派遣事業では規模のメリットはゼロ。派遣事業で差別化できるのは、スタッフへの教育、福利厚生、給与だけだ。そこに時間とおカネを投じるべきで、買収した会社が請求単価の低い仕事ばかりだったり、社保加入が不十分な場合はメリットどころかお荷物になる。私が一度、経営から退いているとき、当時の経営陣は製造派遣への進出を検討していたが、筆頭株主としての伝家の宝刀を抜いてやめさせた。今は本業に立ち返り自律成長に徹する時期だ」と語る。

 客先である企業側の派遣スタッフに対するニーズが高まる一方、スタッフの採用は難しくなっており、請求単価、支払単価ともようやく下げ止まり基調にある。今いるスタッフをどうつなぎ止めるかに各社とも血道を注ぐゆえんだ。

 M&Aに乗り出す外資と迎え撃つ国内老舗が向かい合う構図の中で、国内派遣最大手となったリクルート。売上高1兆円目標を達した人材サービスの巨人が向かう先はどこなのか。その動きが、業界再編のカギを握る。
(週刊東洋経済編集部)

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