アフガンから米軍撤退、「対テロ20年戦争」の帰結 元NHK特派員が経験した憎しみと戦いの20年
やがてアメリカ軍の空爆が始まり、アフガニスタンは焦土と化した。アメリカの空爆は、多くの子どもたちからかけがえのない親を奪った。取材に同行したカメラマンは「この子たちは絶対アメリカに仕返しをしたいと思うでしょうね」とつぶやいた。
その1年後、ペシャワールのマドラサで子どもたちが歌っていたのはビンラディンを称える歌だった。
「神がビンラディンを祝福する/私の大切なビンラディン/ビンラディンはイスラムの子ビンラディンの道は正しく/アルカイダは黄金の花/アメリカとロシアと戦うイスラムの守り手」
アメリカこそテロリストだ
カディルという名の15歳の少年は、アメリカこそがテロリストだと歌った。カディルの兄は、アフガニスタンで命を落としていた。歌は、息子を失った父親が、弟のカディルに教えたものだった。子どもたちにとって、ビンラディンはアメリカと戦い、ブッシュを殺すイスラムの英雄でしかなかった。コーランを学ぶときと同じように、体を前後に揺らしながら、カディルは何度もその歌を歌った。
同じように学校で寝泊りする子どもが、パキスタンのクエッタでは聖戦に向かう戦士であり、アフガニスタンのペシャワールでは肉親を失った犠牲者であった。「アメリカへの憎しみ」という鏡をはさんで、犠牲者と戦士がそれぞれ存在していた。
兵士も、命令を遂行する戦闘員と、生身の人間という2つの面を持っている。アメリカが誇る精鋭特殊部隊ネイビー・シールズ隊員のマーカス・ラトレル氏は『アフガン、たった一人の生還』(亜紀書房)の中でアメリカ側の戦う理由と苦悩を記している。
2005年6月に行われた、タリバンのリーダー、アフマド・シャーの捕捉および殺害を任務とした「レッド・ウィング作戦」。山中でヤギ飼いの民間人3人に遭遇し、作戦を中止。彼らを解放したことでタリバン兵士に包囲されるという極限状態に陥る。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら