東武鉄道の車両、なぜ「魔改造」と呼ばれるのか? 部品自体は60年以上も使用されることがある
この車両の改造の特徴は、制御器等の機器の統一が行われたことだ。制御器とは、電車のモーターの回転をコントロールする機器で、古くはモーターの前に複数の抵抗器を配列し、段階的に抵抗を外すことで電圧を引き上げる抵抗制御が主体だったが。技術が進むにつれ、高速でスイッチのオン、オフを繰り返しオン時間の比率で電圧を制御するチョッパ制御が登場する。現在はインバーターにより任意の電圧が得られるVVVFインバーター制御が主流となっている。
20000系系列は、最初の20000系がチョッパ制御、増備車の20050型からは最新技術のVVVFインバーター制御を採用した。制御装置が2種類あると、各々の予備部品を確保しなくてはならず合理的ではない。さらに1世代前のチョッパ制御器は、年々部品の確保が難しくなってきている。
部品がなくなるとはどういうことか。電車は車両メーカーが製造をするが、小さな部品は個々の異なった会社が製作しており、それらの部品を組み合わせて1つの機器が出来上がる。そのため、製造が終了した機器の部品を、工場が作り続けることはない。メーカーや鉄道事業者は修理用に予備の部品を確保するが、それにも限度があるので、できるだけ最新の機器に統一したほうが、省エネでもありメンテナンスも楽になる。
「魔改造」には理由がある
この20000系の改造も、VVVFインバーターを搭載した電動車のみを使用して改造を行った。そのため3扉と5扉を組み合わせたチグハグな編成も登場してしまったわけだ。
20000系は腐食しにくいステンレス車体を持ち、VVVF車も作られていたので、機器の統一を優先することがベストな方法だったということなのだろう。
通勤電車1両の価格は、仕様によっても異なるが約1億2000万円する。そのため、保有車両数が多いと、一斉に新車に取り替えるには莫大な経費が掛かるので、更新工事で延命できるのであれば、費用対効果が期待できるのではないだろうか。東武鉄道は魔改造が多いといわれるが、それなりの理由があるわけだ。
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