中国で五輪「日本人選手」に誹謗中傷続く2つの訳

対戦相手の中国人選手が自制求めても収まらず

当然ながら中国選手は日本以外の国とも対戦しているのだが、攻撃されるのは日本人選手ばかりだ。これには2つの理由が考えられる。

まず卓球と体操は中国にとっては国技・お家芸とも言える競技で、日本が目の上のたんこぶになっている点だ。

混合ダブルスで中国チームが敗れた瞬間、中国では激震が走った。中国が五輪の卓球で金を逃したのは、2004年のアテネ五輪以来17年ぶりだ。現実を受け入れられず、かといってテレビの前で「申し訳ない」と号泣する中国人選手を責めるわけにもいかない国民のフラストレーションの一部が、対戦相手の水谷、伊藤ペアに向かった。特に26日は、東京五輪で中国が初めて金メダルゼロに終わった日だったことも、国民感情をさらに刺激した。

男子体操については、日本と中国は21世紀に入って金を争い続けている。2008年の北京、2012年のロンドンは中国が団体で2大会連続金メダルを獲っている。その後は内村航平選手が圧倒する時代に移ったが、今大会は彼の全盛期が過ぎたこともあり、中国では団体、個人ともに金への期待が膨らんでいた。

ネット世論「審判が日本寄り」

日本人選手が攻撃される2つめの理由は、試合が日本で行われているからだ。海外のSNSを見ていると、「審判が日本に有利な判断をしている」との批判が非常に多い。無観客試合によってテレビの前の視聴者が心理的に「審判」になっていること、さらにSNSの普及で視聴者が疑いや批判を共有しやすいことが背景にありそうだ。

日本ではあまり報じられていないが、28日に行われた水球女子の日本―中国戦でも、中国人選手がウェイボーで「日本人選手に乗っかられた」と投稿したことから、「日本人選手が反則したのに、審判が見逃した」と炎上、トレンド入りした。

同日、体操個人総合で橋本選手が僅差で中国の肖若騰(シャオ・ルオテン)選手を上回ると、橋本選手の跳馬の採点や肖選手が礼をしなかったため減点されたことなどが、審判の手心によるものと見なされ、今に至るまで「本当は肖選手が金だった」というネット世論がくすぶる状況になっている。

橋本選手のSNSには「カネで金メダルを買った」というような中傷が寄せられているが、これは中国のさまざまな局面で腐敗や買収が常態化していることも関係しているだろう。

習近平国家主席が就任後に「腐敗撲滅」に取り組んで喝采を浴びたが、裏を返せば、スポーツの世界を含めて、カネや人間関係で物事が左右されるという認識が国民の間で共有されていることを物語っている。

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