「多様性と調和」の五輪が今の日本を浮き彫りに 大坂選手の聖火リレー起用と敗戦への批判が象徴

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日本人の母と米国人の父の間に生まれたダニエル選手は、自身のバックグラウンドを理由に、周りの不寛容に悩まされたアスリートの一人で、子供時代にからかわれた経験もある。

「日本に住んでいて、銃を持っているかなどと聞かれ、そのようにからかわれたことはショッキングだった」と振り返る同選手は、適合するために自身の振る舞いを変えるほうが容易だったと認めながらも、同様のバックグラウンドを持つ将来の世代にとって、そのような方法は答えにならないとも理解していると話した。

ダニエル太郎選手(31日・都内)Photographer: Shoko Takayasu/Bloomberg

 

大坂選手の敗退に多くの批判の書き込み

人口の減少と高齢化に対応するため、改正出入国管理法などを通じ、日本政府は外国人労働者の受け入れを増やそうとしている。2020年末時点で人口の約2%が外国籍だ。

日本国内の反移民・反マイノリティー感情は表面的には気づきにくいかもしれないが、現実に存在し、よりあからさまに現われる時もある。大坂選手がシングルス3回戦で敗退した後、ソーシャルメディア上では、同選手には日本を代表する資格がないなど多くの批判の書き込みが見られた。

奈良女子大学の石坂友司准教授(スポーツ社会学)は、「これまで日本の人たちはダブルといわれる人たち、移民で国籍を変えた人に対してあまり歓迎してこなかった」歴史があると指摘。それでも大坂選手が聖火台への点火者に選ばれたことは、今までそういう選択をできなかった点を踏まえれば、「多様性というのはどういうことなのかという、それすら考えてこなかった日本にとっては大きい一歩だと思う」と話した。

八村選手も、子供時代には他人との違いを理由に常に隠れようとしている自分がいたが、スポーツを通じて自身の進む道を見つけたと語っている。日本の男子バスケットボールチームが同じグループのスペインやアルゼンチンなどの強豪に勝つと期待している人はほとんどいないため、同選手へのプレッシャーは大坂選手ほどは強くなかった。

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