菅直人新政権で経済政策はこう変わる

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菅直人新政権で経済政策はこう変わる

6月4日に総辞職した鳩山政権の経済運営を振り返ると、混迷・混乱の連続だった。

発足早々、「コンクリートから人へ」のマニフェスト実現の象徴とすべく、斬り込み隊長のように前原誠司国土交通相が取り組んだ八ッ場ダム建設中止問題は、地元住民の猛反発に遭い頓挫。当初は「潰さない」と明言していた日本航空も結局、法的整理に追い込まれ、いまだ更生計画もまとめられない状況にある。高速道路無料化も、民主党側の高速道路予算要求を受け入れた結果、実質値上げとなる始末だ。

消費税引き上げは4年間棚上げしたが、税収を上回る国債発行で、対GDP比2倍弱と世界断トツの政府累積債務は拡大の一途。公約していた子ども手当も、今年度の半額支給は始まったものの、来年度の全額支給は財源のメドが立たない。
 
 昨年11月20日には3年5カ月ぶりの「デフレ宣言」を行ったが、日銀に圧力をかけるだけでこれといった打ち手はなく、デフレ脱却の時期は見えない。生活者重視を掲げる一方で、財界との関係もギクシャクしている。

こうしたダッチロール的迷走は、普天間問題と共通した鳩山前内閣の現状認識の甘さ、選挙対策を優先した連立政権の矛盾を原因としている。

海外メディアは鳩山首相辞任を受け、異口同音に「政治のリーダーシップ欠如」を厳しく指摘した。最近の国際社会の日本に対する印象について、行天豊雄・国際通貨研究所理事長はこう解説する。「日本人が日本という国を、どういう方向に動かそうとしているのかが読めない。“漂流”しているという感じだろう」。

日本を取り巻く経済環境は厳しさを増す一方だ。米国発金融システム危機は、ギリシャ発の欧州財政危機へと形を変え、世界経済に暗雲が覆う。

今年1~3月期の国内実質GDP成長率は年率5.0%の高成長となったが、GDPデフレーターは過去最大に低下し、失業率は5%台で高止まりするなど、到底楽観できる状況にはない。こうした時期での首相交代。時間の浪費は許されない。

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