鉄道混雑率、首都圏「上位独占路線」が姿消す激変 2020年度、東西線などに代わり浮上した路線は?
ピーク時1時間当たりの輸送人員が最も減ったのは、2019年度に混雑率3位だったJR総武線各駅停車(錦糸町→両国)だった。2020年度は前年度比で3万1950人減の4万2780人と4割以上落ち込み、2019年度に194%だった混雑率は111%まで低下した。
また、JR東海道線(川崎→品川)も2019年度の6万7560人からほぼ半分近い3万5930人に減少。混雑率の低下が全国で最も大きかったのは同線で、2019年度から90ポイント下がり103%となった。JR中央線快速(中野→新宿)も同様に約3万人減り、混雑率は184%から116%に下がった。ピーク時の輸送人員が3万人以上減ったのはこれらの3路線だ。
一方、輸送人員の減少とともに輸送力の増強も効いたのがつくばエクスプレスだ。同線は2020年3月のダイヤ改正で新型車両を導入し、朝ラッシュピーク時1時間当たりの運行本数を22本から25本に増発。輸送力は約2500人分アップした。一方で同時間帯の輸送人員は約7300人減少。混雑率は55ポイント低下の116%となった。
首都圏のテレワーク進展が影響?
調査結果にある全236区間のうち、ピーク時の輸送人員が1万人以上減ったのは計48区間。このうち、大阪メトロ御堂筋線の2区間(梅田→淀屋橋・難波→心斎橋)と京阪電鉄(野江→京橋)、JR京都線(茨木→新大阪)の4区間以外はすべて首都圏の路線だった。国交省のデータによると、混雑率調査とほぼ同時期となる2020年8~10月のテレワーク実施率は首都圏が27.6%だったのに対し、近畿圏は16%、中京圏は13.7%、地方都市圏は9.4%。テレワークの普及度合いが輸送人員減に影響していることがうかがえる。
コロナ禍によって大幅に減った鉄道の利用者数は、混雑率の大幅な低下にもそのまま表れている。ただ、「これまでとほぼ変わらない形で通勤し、『9時スタート』で働いている人は多い」(大手私鉄関係者)。データとしての数値は下がったとはいえ、実際には多くの路線で朝夕の列車は今も混み合っている。ラッシュ時への利用集中が続く限り混雑対策は求められるが、その一方で鉄道会社は利用者減による減収に直面している。
鉄道業界では、コロナ禍が収束しても「以前の利用者数と同水準には戻らない」との見方がほとんどだ。JR東日本や西日本は、混雑時とそれ以外で運賃を変える「変動運賃制」の導入検討を表明している。鉄道各社の経営改善という点でも、時差通勤を広めて鉄道側のラッシュ時の負担を減らし、利用を分散させることがこれまで以上に課題となってくるだろう。
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