家の前が線路、住民たちの「勝手踏切」が招く危険 江ノ電では4月に人身事故、防ぐ手だてはあるか
冒頭でも記したが、本年4月に起きた人身事故。これも勝手踏切を渡ってゴミ集積場へ向かった帰りだったのだが、ここで問題となるのは、なぜ線路を渡って集積場へ向かったのかだ。
先日、事故が起きた場所を訪れた。現場の地形は谷戸になっており、山の中腹を線路が走っている。また、女子の自宅付近は線路よりさらに下にある。女子がゴミ出しをするには、迂回して500mほど歩く経路があるが、勝手踏切を渡れば、15mほどでたどり着ける。
ゴミを出す場所について、鎌倉市・ごみ減量対策課の担当者に聞いたところ、「ゴミ集積場は市が決めているのではなく、地域住民が自分たちで決めており、当該の集積場も住民が話し合って、場所を決めた」と教えてくれた。
ゴミ集積場は、大体20世帯に1カ所ある割合で決めているそうで、場所が決まった後は、鎌倉市としてゴミ収集車が入れる場所かどうかを確認し、ゴミ集積場を確定しているそうだ。
住民が自分たちで指定しているゴミ集積場は、一部の住民が危険な線路をつねに横断することになる場所である。4月に起きた事故の後、住民同士で話し合い、線路側ではない山の中腹にあるゴミ集積場に、女子の自宅付近の住民もゴミを出せるようにしたそうだ。しかし残念ながら、現在もほとんどの人が、今までどおり線路を渡りゴミを出しに行っているそうだ。
理由はごくシンプルだ。遠くまで大きな高低差がある階段を上っていくのが困難だから、ということであった。実際筆者も現場を歩いたが、坂を上り下りするため大変だと感じた。
新規の踏切設置は認められない矛盾
赤道と線路の間には、「危険」と書かれた逆U字型バリカー(歩行者の通行を制限する設備)が設置されているだけで、普通に線路を簡単に渡れてしまう。反対側も、ひと1人がやっと通れるほどの藪だが、ここにも棒状のバリカーがあるだけだ。危ないのなら正規の踏切を造ればいいのにと思うが、そんな簡単な話ではない。
まず現在の法令である江ノ電が準ずる鉄道事業法では、新たに踏切を設置することは原則として認められない。そのために勝手踏切を正規の踏切に格上げすることは、不可能である。
ほかの方法としては高架化や地下化が考えられるが、どちらも莫大な建設費用がかかってしまう。
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