復権狙うトランプ前大統領と一族企業起訴の行方 現代の「テフロン・ドン」をめぐる政治的駆け引き

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渦中のワイセルバーグ氏は司法取引を拒み続けている(写真:Bloomberg)

だが、その希望は叶わないかもしれない。これまでワイセルバーグ氏は司法取引を頑なに拒否してきたからだ。引き続き司法取引に応じなければ、同氏は手錠姿で連行されるといった屈辱にとどまらず、刑務所入りとなる可能性が高い。しかし、ワイセルバーグ氏はこれらをすでに覚悟したうえで行動し、検察の起訴にも動揺していないのかもしれない。直近では税専門家を自らの弁護団に雇い始めたことが報じられ、司法の場で争う構えのようだ。

ワイセルバーグ氏は大学卒業から3年後の1973年、トランプ前大統領の父親フレッド・トランプ氏に雇われ、トランプ家に約半世紀も仕えてきた。トランプ家にとってワイセルバーグ氏は身内のような存在でもある。現在はトランプ氏に批判的な元顧問弁護士のマイケル・コーエン氏が、かつて崇拝していたトランプ氏に仕えたのはわずか10年強であった。それと比べると、ワイセルバーグ氏のトランプ家に対する忠誠心はコーエン氏をはるかに上回るかもしれない。

仮にワイセルバーグ氏が司法取引に応じない場合、本丸を起訴することは困難との見方が支配的だ。トランプ氏は電子メールも携帯電話のテキストメッセージも送付しないため、同氏の関与を示す確固たる証拠はないことが見込まれ、側近による証言が欠かせないからだ。

トランプ氏は起訴を「魔女狩り」と批判

トランプオーガニゼーションとCFOの起訴後、トランプ前大統領は「政治的な魔女狩り」との声明を公表した。

確かにマンハッタン地区のサイラス・バンス・ジュニア検事長は選挙で選ばれた人物であり、政治的思想の影響がなかったとは言い切れない。バンス検事長は、ケネディ、ジョンソン両政権の海軍長官やその後のカーター政権(いずれも民主党政権)の国務長官を務めたサイラス・バンス氏の息子で根っからの民主党支持者だ。検事長は訴追裁量といった絶大な権力を保有する。同氏は間もなく退任予定なので再選狙いといった政治的思惑はないとはいえ、自らを支えてきた民主党支持者の声を考慮し判断を下した可能性はあろう。

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