航空機向けと自動車向けの拡大が課題--榊原定征・東レ社長
入社して研究開発に取り組んで以来、炭素繊維でできた航空機を飛ばすことを、ずっと夢見ていた。確かに業績的に重荷だった時期もあったけれど。
2006年にはボーイング787へ16年間にわたり60億ドル分の炭素繊維複合材料を長期供給する契約を結ぶことができた。8年間の社長在任期間の中では、このボーイング787のことが大きなエポックだ。
当初計画より2年ほど遅れはしたが、今ボーイング787は順調に試験飛行を繰り返している。米国連邦航空局からの型式認定の取得についても、すでに最大の難関は越えた。大きなハードルはすべてクリアできている。そのため、10年第4四半期での全日本空輸への初号機納入は、ほぼ間違いなくできるのではないかと思う。
当面の世界需要は年2割増ペース
ボーイング787は13年の後半に月産10機の生産体制になると聞いている。1機当たりプリプレグ(中間基材)で35トン分の需要が発生するため、年間では4200トンになる勘定だ。
炭素繊維の世界需要は、07年の約3万3000トンをピークに08年は若干減少、09年にはドンと落ちて約2万3000トンとなった。今年は約2割増の2万8000トンを見込んでいる。その後も年20%成長が続くのではないか。そうなれば13年ごろには約5万トンに達するだろう。かつては10年に5万トンというのが業界のコンセンサスだったが、それが2~3年遅れている感じだ。
当社の足元の炭素繊維の状況は、各用途とも出荷が低調となっている。その中で前09年度の第4四半期からスポーツ用途は改善してきてはいる。09年度には約5割の減産を実施してきたが、今年4月以降は減産率を約3割に緩和し、10年度中はそれを継続する見込みだ。