「文理問わず教養教育が重要」池上彰が語る大学論 学びの意欲をどうかき立てていくか求められる

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──大学の教育も変わっていく必要がありますね。

間違いなくそうだ。いろいろな大学が文理融合、要するにリベラルアーツということを言い出し、それに対応した学部ができている。

私立の中高一貫校の中には手っ取り早く進学実績を上げるために、早い段階から文系と理系に分けてしまう学校がある。結果的にまったく数学の素養がないまま大学に入ってくる学生が出てきている。こうした状況に大学側が危機意識を感じていることもあるのだろう。

高校生の立場で考えれば、将来どうなるというよりも、とりあえず有名な大学・学部に入りたいと考えるのは仕方がない。私も偉そうに言っているが、今、高校生だったら、それほど苦労せず、「そんなところに入れてすごいね」と言われるような大学を探したに違いない。だからこそ大学側が変わっていかなければならない。

自ら問いを立てる力を大学生の間に身に付けてほしい

──大学に入学してからの学生の学びの姿勢が大事になりますね。

そう。学生の学びの意欲をどうかき立てていくか、維持していくかが大学に求められている。

今の学生はまじめで、授業に休まず出席するが、すぐに「正解」を求める傾向がある。いろんな大学で「この問題についてどう考えればいいですか」と質問される。確かに、小・中・高校での学びには正解があったが、世の中に出たら正解がわからないことはいくらでもある。「正解を探すのではなく、自ら問いを立てる力」を大学生の間に身に付けてほしい。

大学側も工夫している。例えば、関西の有名私立大学では「潰しが利きそうだから経済学部を選んだ」という学生が多いため、「経済学を学ぶことは楽しく面白いことだという話をしてほしい」と、大学側が毎年、私に依頼をしてくる。

東工大の1年生は著名講師による講義や少人数でのディスカッションなどを通し、大学生活の「志」を明確にする「立志プロジェクト」が必修になっている。これを経験した学生は人文・社会科学系の本を読むようになるなど、明らかに勉学意欲が高まっている。

池上 彰/いけがみ・あきら ジャーナリスト 東京工業大学特命教授。1950年生まれ。慶應義塾大学卒業後、NHKで記者やキャスターを歴任。2005年からフリージャーナリスト。東京工業大学リベラルアーツセンター教授を経て、現在は東工大特命教授、名城大学教授、東京大学客員教授など複数大学で教える (撮影:ヒダキトモコ)

――海外の大学と日本の大学の差は何でしょう。

例えばアメリカの大学は「入りやすくて出るのが大変」と聞くだろう。ハーバードやスタンフォード、MIT(マサチューセッツ工科大学)になると入学するのも大変だが、アメリカの大学は入った後の勉強が半端ではない。

そうした有名大学でなくても、毎週山のような量の本を読ませて、それを基に議論をする。それについて行けないと容赦なく落第させる。「いったん入学してきたのだからなるべく卒業させてあげよう」という日本との大きな違いはそこだろう。

その分、アメリカの大学は1週間に取れる授業のコマ数が少ない。本当に勉強させるのだったら、1週間に取れる科目数を減らして、その代わりに膨大な課題を出して議論をさせていくという仕組みにしていかなければならないと思う。

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