日立、三菱電、海外…大揺れ「鉄道メーカー」総決算 欧州3強は合併で2社に、中国中車は国外苦戦

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日立以外の国内メーカーに目を向けると、川崎重工業の鉄道事業(車両セグメント)の2020年度売上高は前期比2%減の1332億円、営業利益は45億円の赤字で前期から7億円悪化した。国内2位の川重といえども、世界大手と比べると規模ではやや見劣りする。ただ、ワシントン地下鉄という大型契約を獲得した日立同様、川重も4000億円規模のニューヨーク地下鉄プロジェクトを抱えており、捲土重来を期す。

JR東海の子会社、日本車両製造の鉄道事業(鉄道車両事業)の2020年度売上高は前期比19%増の505億円、営業利益は同66%増の50億円だった。JR東海向け新幹線N700Sが本格生産となったことが業績改善に大きく貢献している。

近鉄グループでJR西日本とも関係が深い近畿車両の鉄道事業(鉄道車両関連事業)の2020年売上高も前期比20%増の486億円、営業利益は前期の赤字から7億円の黒字に転じた。とはいえ、「今後しばらくは老朽化した車両の更新需要が続くと見られていたが、コロナ禍によって鉄道会社の投資計画が変わってくる可能性がある」(同社)として、先行きについては慎重姿勢を崩さない。

三菱電機、不正検査の影響広がるか

車両こそ造っていないが、三菱電機はモーターや自動列車制御装置、空調装置などの車両用電機品から鉄道運行管理システム、ホームドアまでさまざまな鉄道関連機器を製造しており、これらを合算すると売上高およそ2000億円(2019年当時)という、隠れた“大手メーカー”である。こと車両用電機品に限れば国内ではシェア6割と圧倒的な存在感を誇る。

三菱電機の長崎製作所。空調装置の不適切な検査を行っていたことが問題になっている(記者撮影)

国内でのシェア拡大余地は乏しく、鉄道事業のさらなる成長のためには海外展開を強化するしかない。その鍵を握るのが空調装置である。

シーメンスやアルストムは自社でモーターなどの電機品を製造しており、三菱電機の食い込む余地は少ない。だが、空調装置は手掛けていない。そこで、三菱電機は空調装置を武器に世界市場に攻勢をかけている。たとえば、ロンドン地下鉄が2010〜2015年に導入したボンバルディア製の新型車両には三菱電機製の空調装置が搭載された。

その矢先、同社の長崎製作所で生産されている鉄道車両向け空調装置と空気圧縮機(コンプレッサ)について不正な検査が行われていたことが明らかになった。空調装置の不正検査は1990年から行われており、その期間は30年以上にわたる。長崎製作所では1950年の初生産以来、これまでに国内・海外合わせ16万台以上の空調装置を生産してきたが、最大でそのおよそ半分にあたる8万4600台の検査が不正に行われていた可能性がある。

「鉄道車両という社会のインフラを担う案件に対して30年以上にわたって不正な検査が続けられてきた。ものすごく大事なことが欠落していると言わざるを得ない」。杉山武史社長は7月2日に都内で行われた記者会見で引責辞任する意向を表明した。鉄道会社側は「使用中の製品に不具合があったわけではなく、三菱電機との取引をやめることは考えていない」(JR九州)といった形で静観の構えだが、安全性への信頼性を低下させたことは、今後の世界展開にも影響を及ぼしかねない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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