アナ雪DVDは、なぜ空前のヒットになったか 1週間で150万枚、興行収入への影響が焦点

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一方、洋画は、劇場公開からDVD発売への間隔が比較的短い。たとえば、昨年12月13日公開の話題作『ゼロ・グラビティ』は、今年4月23日にDVDが発売されている。ディズニーのアニメ映画でも11年3月12日公開の『塔の上のラプンツェル』は同年7月20日にDVDが発売された。このスケジュール感を『アナ雪』も踏襲した。

話題作の場合、劇場公開からDVD発売までのタイミングが短いと、DVDの売り上げにはプラスに働く。劇場公開時の人気ぶりがダイレクトにDVDの宣伝につながるためだ。

一方で、劇場の興行主にとっては不利だ。劇場に足を運ぶよりもDVD化を待って自宅で視聴するほうが気楽だと考える人も少なからず存在するためだ。海外の事例では、かつて劇場公開とDVD発売のタイミングをめぐって物議を醸したことがある。日本でも大ヒットしたジョニー・デップ主演のディズニー映画『アリス・イン・ワンダーランド』(2010年)は、通常より4週間早い、劇場公開から13週間(約3カ月)でDVDを発売するという計画をディズニーが発表し、英蘭の一部の映画館オーナーの間で公開をボイコットを表明するという騒ぎに発展した(その後ボイコットは回避)。

ディズニーによる『アリス』DVD発売の前倒しは、「落ち込んでいるDVD売り上げをてこ入れするため」と報じられている。映画の配給収入が多少減ったとしてもDVDの売り上げが増える方が、トータルで考えればプラスと、ディズニーの経営陣は考えたというわけだ。

興行収入を維持するか、落ち込むか

日本では、『アナ雪』のDVD予約がスタートした5月末時点で、同映画の興行収入は212億円だった。だが、その後も客足は衰えず、DVD発売後の7月19日には、興行収入が250億円の大台に乗った。この数字は『千と千尋の神隠し』(304億円)、『タイタニック』(262億円)に次ぐ歴代3位だ。

7月に入ってからの『アナ雪』の興行収入は毎週2~3億円で推移している。今後は夏休み向けの強力作が続々と公開されるため、『アナ雪』の客足も落ち込む可能性がある。だが、踏みとどまって、歴代2位の『タイタニック』を超えることができれば、「DVD発売後でも興行収入が伸びる」という新しいセオリーを生まれる。『アナ雪』は劇場公開とDVD発売の関係に一石を投じることになるかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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