原発再稼動問題、責任不在の体制変わらず 湖西市の三上元市長に聞く

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インタビューの主なやり取りは次の通り。

──規制委員会の田中委員長は「安全とは言わない」と言い、安倍晋三政権は規制委が安全だと認めた原発は、再稼働させるとしている。安全性について誰が責任を取るのかがあいまいだ。

「福島事故にも関わらず、最終的に誰が責任を取るのかが分からない体制が改善されていない。関電大飯原発の再稼働(2012年夏)は野田佳彦首相(当時)が、県知事の了解を取り付けて稼働の意思決定をした。今回、川内原発は基準に合格したに過ぎず、安全だというわけではないと田中委員長は言った。では誰が責任を負うのか、あいまいだということがわかった」

──責任を取らない体制が続いている中で、再稼働に向かおうとしている。

「米国では、(州・地方政府が作る)避難計画(施設外緊急時計画)について、原子力規制委員会(NRC)が評価に関与する。日本は、避難計画の審査は、規制委員会の仕事ではないと言っている。(インタビュー日の)昨日、坂本森男・消防庁長官に会い、『避難計画を評価するのは消防庁長官の仕事ではないか』と言ったら、(坂本氏は)『そういう指摘があったことを日記に書いておく』と言っていた」

避難計画は作っていない

──湖西市は中部電力<9502.T>浜岡原発から60キロ圏。避難計画は作っているのか。

「作っていない。うち(湖西市)はどうなるのかと県に聞くと、30キロ圏しか作らないという。30キロ圏以遠でも、(福島県)飯館村のように避難指示が出ている。30キロ圏外も考えてほしい、指示を出してくれと県に言っても、県は何も言ってこない」

──政府は規制委が安全を確認し地元が同意した原発は再稼動させる方針だが、地元の範囲について明確な定義はない。川内原発の場合、鹿児島県の伊藤祐一郎知事は、県と薩摩川内市の首長と議会の4者だと発言している。

「(原発が)立地している自治体は賛成が多いが、周りは反対が多い。国は30キロ圏まで避難計画を作るよう求めているのだから、30キロ圏の住人には(再稼動に対する)発言権が生じたと思う。私は100キロ圏だと言っているが。チェルノブイリのような爆発をした場合は、200キロ圏でも住めない場所が生まれた」

──湖西市といえば(トヨタグループの礎を築いた)豊田佐吉の出生地。自動車関連など産業も盛んだと聞く。電気は安くというのが産業界の要求だと思うが、地元自治体の首長が脱原発を訴えていることの産業界の反応は。

「湖西市は佐吉と(トヨタ自動車<7203.T>創業者で佐吉の息子の)豊田喜一郎の生まれた土地。製造業出荷額は全国市町村で22位だ。ハイブリッド車用バッテリーで世界一のプライムアースEVエナジー(トヨタ自動車子会社でパナソニック<6752.T>も出資)などバッテリー会社が3社ある」

「毎年1月、市内の主要企業13社と会合がある。その時に原子力発電所は(コストが)高いと話しをして、みんな聞いてくれる。面と向かって反論する人はいない。内情は、半分の産業人は、そんなことは言ってほしくないと思っているのだろうが、『その通りだ』と言ってくれる人もいる」

──原発に対する危機意識はいつから。

「13年前の9月11日、アメリカの同時多発テロで、飛行機4機がハイジャックされたが、4機のうち1つは、どこを狙ったか分からなくて、空中で爆発した。空中爆発した理由も分からないが、私は、テロリストたちは原発を狙ったと推定している。以来、原発は危ないと発信している」

(インタビュアー:浜田健太郎 インタビューは24日実施)

*一部の文字が正しく表示されなかったため再送しました。

 

(浜田健太郎 編集:田巻一彦)

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