「知恵と経験と人脈の連鎖」という視点で考えると、学校の先生たちはラッキーだという。毎年子どもたちだけでなく、多くの新しい保護者と出会えるからだ。
「ロケット教室も、たまたま協力してくれる親御さんたちがいたから全国展開できるようになった。先生たちは機会を活用すれば最高の人脈を築けるはずなので、ぜひ勇気を出して保護者と仲良くなり、価値の連鎖を広げていってほしいです」
企業は「最終教育機関」として人材育成に取り組むべき
植松氏に、新学習指導要領やGIGAスクール構想などの教育改革はどう映っているのか。
「生きる力の育成をさらに強調した方向性はすばらしいですが、ゆとり教育のときと一緒で、現場がかみ砕けていません。そもそも古い教育から抜け出すには抜本的な改革が必要で、とくに受験制度を何とかすべきです。
例えば、SSHに関わる大学の先生方は『SSHのような活動に取り組んできた子たちを大学に迎えたい』と言うのに、実際はSSHの課題研究を頑張りすぎる生徒は受験に失敗しやすい。暗記量と正確さを競う受験制度であるため、逸材がはじかれてしまうのです」
また、SSHの課題研究は、生徒が自由に研究対象を決められるが「それができない子が圧倒的に多い」とも指摘する。中学受験や高校受験を通じて与えられるだけの教育を受けたことが原因ではないかと、植松氏は考える。
「子どもたちを座らせて詰め込む、フォアグラを作るような教育はもうやめるべき。今後は、1人ひとりの能力を上げていくことが重要で、個々の居場所や役割を見つけるための学校であってほしいと思います。
自分の頭で考えられないから、大学で『何かイマイチ』と思って何となく大学院や専門学校へ行ってしまう子も多いのではないでしょうか。就労人口が減りゆく日本なのに、社会に出る時間を先延ばししていたら、少子化対策をしてもらちが明きません」
こうした日本の現状では、ドイツのマイスター制度のように就労年齢を前倒しするなど、仕事をしながら学び成長できる仕組みを取り入れる必要もあると植松氏は考える。そして、教育改革には企業の努力も必要だと強調する。
「まずすべての企業が採用条件から学歴を外すこと。そうすれば、大学の価値が変わり今の受験システムも変わります。また、企業は『最終教育機関』として、人を使い捨てにせず、スキルだけでなく心の育成も含め社員の能力を上げる努力をすべき。社会人のレベル向上は、企業や社会の発展につながるはずです。
僕は就労継続支援A型作業所も経営していますが、視覚障害といわれる子もコンピューターの活用ですばらしいデザインを描きます。視力が悪くても眼鏡をかければ問題ないように、適した場所や道具があれば誰もが輝く。そういった視点も日本には足りません。
一方、キャリア形成支援のコストを持つ企業には、税制への配慮なども必要でしょう。雇用の概念や社会制度を少し見直すだけで、人の能力のシェアリングは進み日本の総力は上がるはず。そうなれば、国内で戦い合うような形ではなく、真のグローバルなビジネスができるのではと考えています」
(写真:植松電機提供)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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