中小企業「いつ会社を売るべきか」プロの納得分析 「タイミング次第」でM&Aの成否が変わる真実

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3つめの「業績がよい+事業意欲が旺盛」のときは、売却の必要はまったくありません

【タイミング③】業績がよい+事業意欲が旺盛 → 売る必要はまったくなし

これは会社経営にとって「最も理想的な状態」です。このまま経営を続け、事業を伸ばしていくことが、オーナー社長および従業員の幸せにつながりますので、売却を検討される必要はまったくありません

M&Aを検討するとすれば、「売却」ではなく「買収」になるでしょう

シナジーがある事業を適正価格で買収することによって事業領域を拡大し、企業価値の向上を目指すことができます。「M&Aにおけるシナジー」とは「2社以上の企業の能力や経営資源をあわせることにより、各社が単独で生み出す価値の合計を上回る価値を生み出す相乗効果」のことです。

【タイミング④】業績が悪い+事業意欲が旺盛 → あらゆる可能性を検討すべき

この最後のパターンにはいろいろな可能性があります。このままなんとか自力で事業を続けるか、事業資本提携などで取引先や大手と組むか、より事業を伸ばしてくれる会社に売却するか、あらゆる選択肢を検討すべきでしょう。

M&Aで会社を譲渡する場合でも、自らは社長または取締役等で経営陣として残ることを条件とすることもできます。

そうすれば、資本力があり、相性が合って、事業を伸ばしてくれる会社に経営権(株式全部か少なくとも過半数)を譲渡しつつも、グループ企業の一員として、経営を続けられる可能性があります。

オーナー社長の「事業意欲が落ちたとき」は要検討

一般論でいえば、「業績が下がっているときは企業価値が過小評価されやすく、そもそも買い手を見つけづらい」のは事実です。その反対に、「業績が上向いているときは企業価値が過大評価」される可能性があります。

そういう意味では、同じ会社でも売却するタイミングによって売却価格は大きく変わるので、タイミングを見計らって売却したほうがいいということになります。

しかし、これは「言うは易く行うは難し」です。絶好のタイミングで高い価値で売却できればいいですが、それが難しい状況であれば、結局は、私は、業績の良しあしにかかわらず、「オーナー社長の事業意欲が落ちてきたとき」が売却を真剣に検討すべきタイミングだと考えています。

中小企業のオーナー社長には、「経営者人生における有力な選択肢」としてM&Aを見据えた経営を検討していただければと思います。

藤井 一郎 インテグループ代表取締役社長

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ふじい いちろう / ichiro Fujii

1997年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、三菱商事に入社。その後、米国サンダーバード国際経営大学院にてMBAを取得。2007年にM&A仲介・アドバイザリーのインテグループ株式会社を設立し、代表取締役社長(現任)に就任。中堅中小オーナー企業、上場企業、バイアウトファンドなどを顧客に、これまで100件以上のM&A成約に関与。2016年を最後に自ら案件を担当することをやめ、その後は、M&Aコンサルタントの採用・育成、コンサルタントに対する助言および経営業務に専念している。著書に、ビジネス交渉の分野でのベストセラー『プロフェッショナル・ネゴシエーターの頭の中―― 「決まる! 」7つの交渉術』がある。

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