赤道「かすめてもない」のに赤道ギニアと名乗る訳 世界各地の「へぇ~」なおもしろ雑学を紹介

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古来、土地の領有権をめぐって数多くの争いが起こってきた。多くの国が自国の領土は広ければ広いほどよいと考えるからだ。ところが、「この土地はいらない。お前、とっておけ」「いや、こっちもいらない。お前こそ自国に編入しろ」と、手つかずの土地を押しつけ合っている国がある。その国とはエジプトとスーダンだ。

エジプトと言えばピラミッドで有名ですが…(写真:iStock/Givaga)

エジプトとスーダンは、かつてイギリスに植民地支配されていた。宗主国のイギリスは19世紀末から20世紀初頭にかけて、エジプト・スーダン間の国境策定を実施。最初は北緯22度線上に長さ約1200キロのまっすぐな国境線を引いたが、それを3年後に取り消して再策定。

北緯22度線のエジプト側に位置する「ハライブ・トライアングル」という一帯をスーダン領とし、スーダン側に位置する「ビル・タウィール」をエジプト領とした。再策定した国境線が紅海の近くで蛇行しているのは、遊牧民の土地利用の実態を踏まえたためだという。この国境線をエジプトとスーダンは受け入れ、しばらく平穏な時が流れたが、20世紀末に事態は急展開を迎える。

1992年、スーダンがエジプトの了解なしにハライブ・トライアングルでの油田権を外国企業に与えたため、エジプトが怒り、軍を出動させてこの地を実効支配しはじめたのである。

ハライブが欲しい! ビル・タウィールは要らない!

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国際法によると、2国が2つの土地の領有権を争う場合、1国が2つとも領有することはできない。すなわち、一方の土地を領有したら、もう一方の土地は相手国のものにしなければいけない。

ハライブ・トライアングルの領有権争いにおいて、エジプトは「最初の国境線が正しい」と主張したのに対し、スーダンは「再策定された国境線が正しい」と主張。両国ともハライブ・トライアングルを自国領とすべく、野心をむき出しにした。ハライブ・トライアングルを領有すると石油利権が手に入るが、ビル・タウィールを領有してもなんの利益も見込めないのだから、当然といえば当然である。

かわいそう(?)なのは、エジプトにもスーダンにも不要扱いされたうえ、遊牧民も利用しなくなったビル・タウィール。誰からも必要とされなくなった約2000平方キロの広大な「無主地」は、新しい主人の登場を静かに待っている。

ライフサイエンス
らいふさいえんす

幅広いネットワークを生かして、国内外を問わずあらゆる情報を収集し、独自の切り口で書籍を制作する企画編集組織。スパイスのきいた視点には定評があり、生活に根づいた役立ち情報から、経済・地理・歴史・科学といった教養雑学まで、その領域は広い。主な著書に、『読み出したら止まらない! 英語 おもしろ雑学』『関東と関西 ここまで違う! おもしろ雑学』『知れば知るほど面白い 世界の「国旗・国歌・国名」なるほど! 雑学』『ここまでわかった! [図解]恐竜の謎』『見たい、知りたい! 日本の庭園』(以上、三笠書房〈知的生きかた文庫〉)などがある。

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