住友商事、気候変動の株主提案「賛成2割」の重圧 「脱石炭」に遅れ、石炭火力完全撤退は2040年代

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しかし、住友商事は「(マタバリ3、4号機への参画にあたっては)パリ協定との整合性が最も重要だ」と回答し、どっちつかずの姿勢を崩さなかった。

住友商事は今後、どのように脱石炭を進めていくのか。その手法にも注目が集まる。というのも、同社は石炭火力の燃料にバイオマス燃料を混ぜたり、石炭火力発電所をバイオマス発電所につくりかえたりすることも脱石炭を進める手法の1つとしているからだ。

バイオマス発電は再生可能エネルギーとみなされており、国内の間伐材や海外木材などが発電に使われている。ただ、生産から輸送、燃焼までのライフサイクルを考えると、海外木材は温室効果ガスを大量に排出する燃料とする懸念もある。しかし、こうした性格を持つ海外木材の利用に最も積極的なのが住友商事だ。

強まる石炭火力発電への風当たり

国際環境NGOのマイティ・アースは6月10日に公表した報告書で、「(住友商事は)北米からの木質ペレットの輸入を大幅に増やしている」と警鐘を鳴らす。今後、温室効果ガスを一定以上排出するバイオマス発電についてはパリ協定と整合しないなどと評価されることになれば、住友商事のこうした姿勢は新たな批判を呼び込むことになる。

住友商事の兵頭誠之社長。脱炭素に向け、どのような姿勢を具体的に示すかが問われている(撮影:尾形文繁)

住友商事は2021年3月期決算に、オーストラリアで運営する石炭火力発電所に絡んで250億円もの減損を計上した。6月のG7サミットでは温室効果ガスの排出削減対策が講じられていない石炭火力発電に対して年内に輸出支援を終了することが共同声明に盛り込まれるなど、石炭火力発電への風当たりも強まっている。

住友商事の兵頭社長は、インドネシアの石炭火力発電プロジェクトなどインフラ畑を歩んできた。燃料コストが安価で、安定して電力供給できる石炭火力発電は途上国での引き合いが多く、住友商事の安定した収益源となってきた。だが、事業環境の変化に合わせ、これまでのビジネス姿勢を変える必要に迫られている。

東洋経済による5月のインタビューで、「(情勢変化に応じた石炭関連資産のさらなる削減目標の強化について)そうしなきゃならないと思う」と答えた兵頭社長。今回の株主総会における2割の声にどう耳を傾けていくのか。住友商事の姿勢が改めて問われている。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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