無償で品出しも強要されるトラック運転手の悲惨 「荷主第一主義」の下、契約にない作業が跋扈

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こうして「長時間労働・低賃金」という業界の構図ができあがれば、ドライバーになろうとする人が集まるはずもない。貨物自動車運転手の2020年度の有効求人倍率は1.94倍。全産業の1.01倍を大きく上回っており、労働力不足が続いている。

「トラック運送業は依然として他産業よりも労働時間が約2割長い一方、年間賃金は約1~2割低く、職業としての魅力が他産業と比して低いことが一因であると考えられる」(国土交通省「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」)

またトラックドライバーの高齢化はほかの産業よりも深刻で、「高齢者ドライバー」という大きな日本の社会問題の陰で、70代でも大型に乗り続けている人、定年後の再就職先で「即戦力」として雇われるドライバーも数多く存在している。

「物流二法」によって過当競争に

トラックドライバーがここまで附帯作業を強いられるようになったきっかけがある。1990年に制定された「物流二法」による規制緩和だ。

この二法は「貨物自動車運送事業法」と「貨物運送取扱事業法(後の「貨物利用運送事業法」)」のことで、物流業界への新規参入を促すため、従来の免許制を許可制にしたり、最低保有車両台数を下げたり、といった規制緩和で業界の活性化を図った。

施行後、約4万社だった運送業者は2011年のピーク時には6万3000社ほどにまで急増。国の思惑どおり、価格競争のきっかけにはなったが、その一方、現場では競合他社同士でのつぶし合いが勃発。過剰な値下げ競争や、「附帯作業」での差別化で生き残りを強いられた。

荷主が契約にない附帯業務を無償で提供させるのは、下請法や独占禁止法に違反するおそれがあるが、仕事を失う怖さから告発は難しく、今や業界は「運賃が安いは大前提」「附帯作業はトラックドライバーがして当たり前」の完全な「荷主第一主義」に陥っている。

ある運送事業者によると、附帯作業を断ったりその料金を請求したりすると、「ほかに代わりはいくらでもいる」という脅しのような言葉をダイレクトに浴びせてくるところもあるという。

「仕事をもらうための条件として、運賃値下げに加えて、付帯業務のサービスを付ける必要があります。納品後に店内店頭で棚入れ、消費期限を調べて前後入れ替え、陳列とか、どう考えても店の仕事でしょう」(九州長距離大型ドライバー)
「こうした附帯作業は、もはや仕事を取るときのカードにすらならない。『ドライバーがやって当然』という認識です。同僚が作業について荷主に不満を言ったところ、『他社は文句も言わずにやってくれるけどね?』と返されたそうです」(30代中型フリードライバー)
「あまりにひどい扱いを受けたので、一度荷主に「荷役作業代を請求します」としたところ、仕事が二度とまわってこなくなりました」(50代大型長距離ドライバー)
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