カシオ、「チャイナプラスワン」でタイ拡張 時計に加え、第3工場で電卓、電子辞書生産

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こうした懸念について、狩佐須氏は、「私は06年のクーデターも13年の反政府デモも見てきたが、タイ人は本質的に争いを好まないと思っている。また、人件費の高騰は生産性の向上によってカバーできる。中国の河南省で人件費が14~15%上昇しているのに対して、タイは4~5%。一方、コラートで生産を始めて2年が経つが、生産性は20%アップした」と説明する。

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コラートの第3工場

生産性のさらなる向上を図るために、コラート工場では新たな取り組みも行っている。たとえば、これまでは各ベンダーから送られてきた部品を直接ラインに流していたが、最近では送られてきた材料を、いったん電卓1000台分の部品セットという形にまとめてからラインに流す方式に変更した。この方式に変更してからは、在庫管理の精度も上がったという。

電卓と電子辞書の海外展開を支える

カシオにとって、電卓と電子辞書は安定した収益を上げる重要な分野だ。2014年3月期における電子辞書事業の営業利益は約63億円で、全社の営業利益(全社費用調整前)の約2割を占める。電卓事業に関しては、業績の詳細は公表されていないが、5000万台の出荷台数で営業利益率は10%強。カシオにとって小さくない事業なのは間違いない。

この電卓事業が高収益を実現できる理由は2つある。

一つは残存者利益を享受できていることだ。モルガン・スタンレーMUFG証券の田口氏は「かつては競合する会社が多数いて、電卓戦争とよばれる熾烈な競争があったが、いまはほとんどが市場から退出していて寡占状態となっており、利益の出る市場構造となっている」という。

もう一つは経理担当者や会計士などのプロ向けに高機能・高価格の商品を提供できていること。1000円前後の普及品がイメージされがちだが、関数電卓など1万円を超すものもある。

ただし、長期的には電卓、電子辞書ともに規模縮小は避けられない。電子辞書は売り上げの大半を占める国内市場が少子化により年々縮小しており、電卓も低価格帯の商品はスマートフォンで代替されつつある。電卓はすでに販売の大半は海外だが、電子辞書も海外での販売を拡大する。従来販売を行ってきた中国に加え、今年3月にはインドネシアでの販売も開始した。

さらに、タイのコラート工場でどれだけ生産性を引き上げられるかが、今後の電子辞書、電卓事業の帰趨を握る。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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