カシオ、「チャイナプラスワン」でタイ拡張 時計に加え、第3工場で電卓、電子辞書生産

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コラートの第3工場では現在電卓を生産している。10月からは電子辞書の生産も始める。

タイの首都バンコクから東北に車で約4時間。1面に広がる畑の中にカシオ計算機のタイにおける生産拠点、コラート工場がある。工場の総延べ床面積が約3万平方メートルなのに対して敷地面積は14万平方メートルとはるかに広く、これから拡張していこうという意欲をうかがわせる。

そのコラートで7月8日、カシオのタイにおける第3工場の開所式が行われた。村上文庸カシオ計算機取締役専務執行役員は、「カシオタイを、多品目の生産ができるカシオの主要生産拠点にしていく」と意気込みを語った。

これまで、コラート工場ではG-SHOCKを初めとする時計のみを生産していたが、第3工場では6月から電卓の生産を始めた。10月からは電子辞書の生産も開始する計画だ。現在は電卓を月30万台生産しており、年内には電卓を月100万台、電子辞書を月10万台まで増やす見込み。カシオの電卓出荷台数は年間約5000万台なので、おおむね4分の1を賄うことになる。

中国と並ぶ生産拠点へ

カシオがタイ工場を拡大している背景には、アジア市場の需要の拡大に加えて、中国における人件費高騰や、対日感情の悪化などの「チャイナリスク」への対応、いわゆる「チャイナプラスワン」がある。

2014年3月期の地域別生産比率は、日本が10%、中国が80%、ASEANが10%と、中国への依存度が高い。今年6月までカシオタイの社長だった狩佐須完男(かりさす・さだお)氏は、「生産と材料の調達を中国からタイにシフトさせている。中国への依存度を少なくしていこうと考えている」と話す。将来はアジアでの生産を中国とタイで半々の比率にしていく考えだ。

モルガン・スタンレーMUFG証券のアナリスト・田口洋氏は「現在、カシオの中国における電卓生産の50%はグループ外の企業によるOEM供給。タイでの生産拡大により、その比率を減らして内製化を進めて、利益率を改善する狙いもあるのではないか」と指摘する。

カシオが中国に代わる生産地としてタイを選んだ理由は、タイ人が日系企業や日本人に対して親しみを持っていることや、部品の調達がしやすいことなど、条件を複合的に勘案した結果だという。

しかし、タイでも5月にプラユット陸軍司令官率いる軍事クーデターが起きたばかり。昨年11月以降続いたタクシン派と反タクシン派の争いによる政情不安にはいったん区切りがついた恰好だが、政治混乱の経済への影響は残っている。また、タイでも人件費は上昇している。

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