「孤独死」を否定しない「生き方」を示した知識人 徒党を組むことを嫌った山崎正和氏の「死に方」
「孤独死」は、徒党を組むことを嫌った山崎氏の「死」への姿勢そのものである。山崎氏の「生き方」、そして「死に方」には、「生」だけでなく、「死」のあり方もまた、個人に委ねられるべきことを教えてくれる。
いかに「死」に向き合うべきか
私は、山崎正和氏が亡くなる半年前の2020年2月21日にインタビューした。山崎氏の“最後のインタビュー”だったと思う。
山崎氏は、2018年から雑誌『アステイオン』(CCCメディアハウス)に「哲学漫想」の連載を始めた。同年に『リズムの哲学ノート』(中央公論新社)を出版したが、まだ書き残したことがあるといった。
予定では、4回の連載のハズだった。4回目の原稿の締め切りは、8月末だった。ただし、途中から、もう少し書きたいと意欲を見せていた。5回目も書く予定だったと思われる。
実は、山崎氏は、3月頃から腹に水がたまるといって、腹水を除去する手術を受けることになっていた。
山崎氏は亡くなる1週間前に検査入院した。4回目の原稿を書くため、パソコンを携えていた。原稿は8月18日に仕上がった。
亡くなったのは、その翌19日朝である。
『アステイオン』に載った原稿の最後尾にこう添えられていた。「原稿未完・稿了」――。
いかに死ぬべきか。いかに「死」に向き合うべきか。その大きな問いに答えを出すのは簡単ではないが、山崎氏の見せた「死に方」は、「死」に向けた覚悟あってこそ、よりよい「生」につながることを、私たちに教えてくれるように思うのである。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら