「ランドクルーザー」14年ぶりの新型に見る課題 ラダーフレーム、非電動化…守る“らしさ"

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新型ランドクルーザーの開発に際し、ランドクルーザーの本質である「信頼性・耐久性・悪路走破性」を進化させつつ継承しながら、「世界中のどんな道でも運転しやすく、疲れにくい走りを実現することの2つを重要視した」と説明。

そのためにTNGAに基づく新たなシャシーフレーム(車台)の開発と、徹底した軽量化が必要だったという。

「体幹ともいうべきフレームには世界初の溶接技術を導入することで、余分な重ね合わせが不要となり、大幅な軽量化が実現できました。溶接技術の匠たちの力によって実現したこのフレームは、トヨタのものづくりの象徴といっても過言ではありません。こうした“素性の刷新”の積み重ねにより、世界中のどんな道でも運転しやすい、疲れないランクル300の走りが形作られています」(横尾氏)

高いオフロード走破性のために継承されたラダーフレーム構造(写真:トヨタ自動車)

ランドクルーザーの本質を守る礎である堅牢なラダーフレーム構造を踏襲したうえで、新GA-Fプラットフォームを開発。200kgもの軽量化には、こんな背景があったのだ。

さらに、低重心化や重量配分・サスペンション構造の改善などを実施。「凄腕」「匠」といわれる社内の熟練テストドライバーやダカールラリー出場ドライバーをはじめとする評価メンバーが実路走行での作りこみを行い、「オンロード、オフロードの双方で運転しやすく、疲れにくいクルマに仕上げられた」という。

「ランクルしか走れない道がある」という事実

ランクルは世代が替わってもランクルであり続けなければならない。

そんな使命を背負いながらも、年々厳しくなる排ガス規制や衝突安全性などの基準をクリアし、ランドクルーザーという存在が生き続けるために進化を遂げたのが、今回のフルモデルチェンジだ。

世界で活躍するランドクルーザー(写真:トヨタ自動車)

「ランクルでしか走れない道がある」という役割を今後も担っていけるのかどうか。ランドクルーザーが、その重要な局面を迎えていることは間違いない。

横尾氏のいうとおり、「どんな道でも運転しやすく疲れない」「ランクル80の持つ悪路走破性を超えたモデル」となっているのか。「ランドクルーザーがなくなると世界中で困る人がいる」というランクルが築き上げてきた70年の歴史を途切れさせないためにも、実車に触れられる日が待ち遠しい。新型ランドクルーザーの発売は、2021年夏以降が予定されている。

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先川 知香 モータージャーナリスト

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さきかわ ちか / Chika Sakikawa

初めて見たバイクレースでマシンをバンクさせながら膝を擦って進入していくコーナリングを自分もやってみたいと思ったのをきっかけに、マシンを操ることの面白さを知り、その面白さを多くの人に伝えるべくモータージャーナリストを志す。現在の対象は2輪から4輪までと幅広く、Web や紙媒体で執筆中。愛車は Kawasaki Z250 とGASGAS、TOYOTA86 MT 仕様。休日は愛車でのサーキット走行やトライアルにも挑戦中で、公私共に乗り物漬けの日々を送る。

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