新婚夫婦「家事のやり方」で揉めないための注意点 ジャガイモを「洗濯機で洗う妻」と「手で洗う夫」

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説明を求めたときに、こうした論理的な話になれば、こちらの言い分も話し、双方納得の上で方針を決めればいい。ところが「謎の理由」や感情論が出てくることもある、とK氏は笑う。

「バスタオルをホテルの畳み方みたいにしろって言われたときは「は?」ってなりました。「三つ折りでええやん」って僕は思うわけです。そこだけはバトりました。いくら妻に「こっちの方がきれいやんか」って言われても「知らんがな」ですよ」。

大分バトルをしたとはいえ、心優しいK氏は、最終的には、折れて、彼女の好む畳み方を覚えたという。が、例えば「どうしても、君のようにうまくは畳めないから、畳むのは君に頼みたい」と、自分は手を引いて相手に任せるやり方もあるだろう。特に、納得しがたい「謎の理由」や、手間がかかって、失敗しそうなもの、うまくできなくてかえってもめ事の種になりそうなものについては、「自分には無理そうだから、お願いします」とやんわり境界線を引いて、相手に任せてしまうのも一案だ。

肉を洗う習慣のある家庭で育った人は、洗わなければ気持ちが悪い。「気持ちが悪い」という感情的な部分はなかなか譲れない。肉を洗わないと起きるデメリットを説明できるわけではないが、習慣だから、洗わなければ我慢できない。けれども、「え? 肉って洗うものなの?」という人は、ついつい洗い忘れてしまう。こんなカップルの場合も、「洗うの忘れちゃうから、肉料理は任せるよ」と兜を脱いでしまった方が、もめないし、何より、お互いに納得の上で、作業の棲み分けができる。

双方の納得が大切

ささいなことのようだが、育った家庭の習慣が違えば、家事の常識も違ってくる。夫が理由を聞いてみることで、お互いの認識のずれに気がつく。尋ねられることで、「そういえば、何でかしら?」と妻も自分の家事を見直すきっかけになる。一方、理由を尋ねることで、夫の方は修正案を出しやすくなる。

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その後、どちらかの方法にしたがうのか、あるいは、二つのルールを共存させるのか、さらには、「君のルールは、僕が実践するのはかなり大変そうだ。ここは君のテリトリーとして、君に任せるよ」と一線を引くのかは、ケースバイケースだ。

大事なのは、こうやって理由を聞き、話をしながら、お互いの生活習慣に気がついていくことではないだろうか。その上で、一線を引いて棲み分けるなり、共同で作業するなり、というやり方を、双方納得の上で決めていけばよいのだと思う。

佐光 紀子 翻訳家、家事研究家

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さこう のりこ / Noriko Sako

1961年東京都生まれ。1984年国際基督教大学卒業。繊維メーカーや証券会社で翻訳や調査に携わった後、フリーの翻訳者に。とある本の翻訳をきっかけに、重曹や酢などの自然素材を使った家事に目覚め、研究を始める。2002年『キッチンの材料でおそうじする ナチュラル・クリーニング』(ブロンズ新社)を出版。以降、掃除講座や著作活動を展開中。2016年上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士前期課程修了(修士号取得)。家事に関する著書多数。

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