テスラの練り上げられた作戦に脱帽してしまう訳

EVの販売台数を数えているだけでは真価を見誤る

テスラのビジネスモデルの要諦はEVづくりにない(写真:Brent Lewin/Bloomberg)
DX(デジタルトランスフォーメーション)の勝者が次に目指すのは「脱炭素」と「公平・公正」――。立教大学ビジネススクールの田中道昭教授が、テスラ、アップル、セールスフォース、ウォルマート、マイクロソフト、ペロトン、アマゾン、DBS銀行のグランドデザインを徹底解説した新著『世界最先端8社の大戦略 「デジタル×グリーン×エクイティ」の時代』より一部抜粋、再構成して3回連載でお届けします。
第1回「ウォルマートが世界最強小売企業の座を固めた訳」(6月17日配信)に続く第2回はテスラです。

クリーンエネルギーを「創る、蓄える、使う」

テスラの株価はコロナ禍にもかかわらず急騰を続け、2021年1月には1年前の9倍以上にまで膨れ上がりました。2020年の業績は、中国市場と北米市場が牽引して好調を維持、販売台数は前年比25%超の約50万台に達し、売上高は前年比28%増の315億ドル(約3兆4500億円)、営業利益は20億ドル(約2200億円)と上場以来初の黒字を達成しました。今やテスラはEVのリーディングカンパニーです。

もっとも、EVだけでなくガソリン車を含めた自動車全体の販売台数を見れば、トヨタ自動車はグループ全体で952万台(2020年)に達しており、テスラはその9分の1程度にすぎません。

にもかかわらず既存の自動車メーカーを圧倒する高評価を得ているのはなぜか。それは端的にいえば「テスラは自動車メーカーではない」からです。テスラという会社のビジネスモデルの要諦は「クリーンエネルギーのエコシステム」を構築することにあります。EVの販売台数を数えているだけでは、テスラの真価を掴みそこねてしまいます。

実際、テスラの事業はEVだけではありません。太陽光発電を行う屋根「ソーラールーフ」や、急速充電器「スーパーチャージャー」、家庭用蓄電池「パワーウォール」などのエネルギー事業を着々と拡大させています。売上高の内訳を見ると、約80%は自動車の販売・リースですが、約10%は発電・蓄電関連、残り10%が充電ステーションなどのサービスの売上です。2016年には太陽光発電会社のソーラーシティを買収し、発電・蓄電関連の売り上げは増加傾向です。

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