クレーン大手・タダノが挑む海外買収戦略の大胆

独社買収で建設工事の大型化、風力発電に対応

石油化学プラントなどでも、エネルギー業界向けに大小さまざまなクレーンを一括販売することが多く、大型クレーンがないとそうした営業にも不利に働く。クレーンの価格は持ち上げ重量1トンに対して100万円程度と言われ、大型ほど高くなる。超大型ATなら10億円程度、大型CCになると、十数億円になる。

こうした大型化の流れに対応すべく、タダノはファウンで600トンクラスのATの開発を試みたが、開発は難航。より重いものを持ち上げられるパワーと安定性を確保しつつ、公道走行ができるように車体サイズや車体重量を抑える必要があり、技術的にも難易度は高い。

ドイツ子会社の買収は「必要だった」

結局、ファウンでは大型新製品の発売にこぎ着けられず、開発リソースの不足で他機種のモデルチェンジも遅れた。こうした弱点を補うべく、買収の機会をうかがっていたところに、大型のATやCCを得意とするデマーグの買収話が浮上し、渡りに船と買収に至ったのだ。

タダノはデマーグの買収により、最大1200トンまで持ち上げ可能なATのほか、ラインナップにないCCも最大3200トン持ち上げ可能な製品まで拡充できた。タダノの氏家俊明社長は「工事の大型化にともなってクレーンの大型化が必要なのは間違いなく、デマーグの買収は必要だった」と振り返る。

2021年2月、社長就任会見に臨む氏家俊明社長(左、写真:タダノ)

クレーン大型化を目指すタダノの戦略の中核を担うデマーグだが、収益力は万全とは言いがたい。デマーグとファウンの欧州2子会社は2020年10月にドイツの裁判所で事業再生手続きを申請し、2021年3月に再建計画が正式に承認され、約100億円の債務免除を得た。同時に約2300人いたデマーグとファウンの従業員をリストラし、現在の社員数は約1700人となっている。

【2021年6月8日11時13分追記】初出時の表記の一部を修正いたします。

タダノは5月の決算発表に合わせて2024年3月期を最終年度とする中期経営計画を発表した。2024年3月期に売上高2750億円(2021年3月期比48%増)、営業利益275億円(2021年3月期は42億円の赤字)を目指す。

タダノの建設用クレーンシェアは現在、欧州で13%だが、氏家社長は「2023年度(2024年3月期)に20%強をまずはとっていく」と意気込む。欧州事業は2025年3月期の黒字化を計画している。

クレーンの世界最大手はドイツのリープヘルで売上高はおよそ5000億円程度だとみられ、売り上げ2000億円規模のタダノはクレーン業界で世界7~10位程度に位置している。移動式クレーンのシェアではタダノとリープヘルは拮抗するものの、リープヘルは大型のATやCCといった高価格製品を主力にしている。比較的安価なクレーンを得意とするタダノとはその分収益で差がついている。

売り上げ規模や利益を伸ばすには、台当たりの金額が大きいATやCCの強化が欠かせない。リープヘルの背中はまだ遠く、中計目標の実現はデマーグ再建の成否にかかっている。

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