南海電鉄、ガンダムコラボ列車の劇的効果 「シャア」仕様のラピートはどう受け止められたのか

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ちなみに、若林氏はラピートのデザインにあたって「ガンダムを意識したことはない」という。「車両が完成したときに鉄人28号に似ていると言われたことはあります。でも鉄人28号も意識していませんよ」。戦前の大陸横断鉄道や弾丸列車といった力強いイメージを追求した結果、ユニークな先頭形状のデザインができあがったという。

本業は建築家である若林氏にとって、鉄道デザインは初めての経験。「もともと自動車デザインをやりたくてデザインの道に入った」という若林氏は、南海からの依頼を即座に受諾。最初の打ち合わせからわずか2日でラフ模型を作り上げた。色は、青のほかに南海電鉄のカラーであるグリーン、そしてタスマニアブラウンの3色が候補として挙がり、南海社内の会議で全員が青を選んだそうだ。

困難を極めた制作過程

ただ、若林氏のデザインから実際の車両を製造する作業は困難を極めた。たとえば、客席部分の車両断面は楕円の予定だったが、通常の車両と同じ四角形に変更された。整備工場には四角い車両に合わせたキャット・ウォーク(通路)しかなく、楕円の車両だとすき間ができてしまうため、車両上部の点検が危険だという理由である。

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南海創業130周年に当たる来年は、さらに驚きの仕掛けが登場するかもしれない

正面のガラスも3次曲面ガラスの計画だったが、2次曲面に変更となった。これは「3次曲面だとレンズ効果が発生して、運転席から見たときに距離感が狂う」と、運転士からクレームがついたためだ。

もっとも、実際の車両を見ると、車両断面はすべて楕円のように見えるし、フロントガラスも2次曲線には見えない。これはまさに、若林氏のデザイン力のなせる技といえるだろう。

コラボ契約が切れた赤いラピートは、元の青色に戻ることになる。「赤は好評だったが、今後については未定」(南海)。だが来年は、南海電鉄にとって創業130周年、会社設立90周年に当たる。ひょっとしたら、ファンが驚くような新たな配色を施したラピートが登場するかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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