石原さとみ「すき家」CMが女性の心をつかんだワケ ポカリスエットのスケール感のあるCMも注目

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このほか注目したいのはキリンビールの企業広告で、「よろこびがあふれ出す。それがビール。」をテーマに展開するシリーズの第2弾だ。CMは60秒のみの展開で、BGMにはMONGOL800の『小さな恋のうた』のインストゥルメンタルアレンジが使用されている。

人気のない夜の公園でふたりの青年が漫才の練習をしていると、目の前のベンチにスーツ姿の男性が座って缶ビールを飲みはじめる。続けて「息子がお笑いの道に進むと言い出した」という男性の語りとともに口論する父子の映像がインサートされ、ひとりの青年が気まずそうに「オヤジ」と相方に打ち明ける。

ラストは覚悟を決めたように漫才を続けるふたりと、彼らを見守りながら「全然笑えねぇぞ。全然」「でも、やってみろ」と心の中でエールを送り、ぶっきらぼうに缶ビールを差し出す父親の姿を映した。「ときどきビールは、応援歌になる。」のコピーのもと、“ビールが生みだす喜び”をエモーショナルなストーリーを通して印象づけた。

ショートムービーのような見応え

CMでお笑い芸人を目指す若者に扮したのは、実際にお笑いコンビとして活動しているGパンパンダ(星野光樹、一平)だ。ともに早稲田大学を卒業し、いったん社会に出た後にお笑いの道を目指したという。自身に近い役柄ということもあってか、父親役の俳優・利重剛とともに葛藤しながらも互いを思い合う親子を情感豊かに演じている。なお本作は公園飲みといった表現への配慮から今月上旬まで約2週間の放送となり、5月前期調査では17回の放送だったが視聴者から高い評価を獲得した。

支持層を見ると40、50代の女性などから多く得票した。40歳以上の親世代からは「父親が何も言わず、二人に缶ビールを渡すところにジーンとくる」「親として子どものやりたいことを応援するところが、今の自分に重なり感動した」などの声が目立った。若年層からもストーリーやコピーを評価するコメントが見受けられ、さまざまな世代の視聴者がそれぞれの立場から本作に共感を寄せたことが見て取れる。

前述のポカリスエットと同様に、ショートムービーのような見応えのあるクリエーティブで多くの人々の心を捉えたようだ。両者とも商品について声高にアピールするCMではないが、熱量の高い表現を通してそれぞれの企業やブランドが大切にしているメッセージを伝えることに成功したのではないだろうか。

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