中小企業M&A「売れる」「売れない」会社の決定的差 買い手に「魅力的」と思わせる会社の特徴は?

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【売れる会社の特徴③】「M&Aのプロセス」が適切である
◎適切に売却希望価格を設定する
◎買い手からの質問に誠実かつ迅速に答える
◎M&Aの交渉中も月次の業績を維持・向上させる

売却価格は、ある程度交渉の幅をみて、少し高めの希望価格を提示するのは問題ありません。しかし、相場価格と比べて高すぎると、入り口の段階で興味をもってくれる会社がいなくなるため、売却希望価格は適切に設定する必要があります

いったん売り手から買い手に対して売却希望額を提示すれば、売り手から「価格を上げる」という交渉は難しくなるので、絶妙な希望価格の設定が必要になります。

買い手候補との交渉が始まると、買い手からさまざまな質問が出てきます。買い手としては、会社の内容を精査しリスクを把握する必要があるためです。耳が痛いことも質問してきますが、可能な範囲でこれらに対して誠実かつ迅速に対応することが好印象につながり、交渉を有利に進めることになります。

M&Aの条件交渉は、最初のアプローチから最終契約書の締結まで、2〜3カ月以上かかるので、その間にも月次の数字を都度開示する必要があります。

月次の売上・利益が下がると印象が悪くなり、売却価格の減額要因にもなるため、売却を決意したあとも本業は絶対に手を抜かないようにしなければなりません。

「売れる会社」を目指した「経営改善」が吉

ここまで、売却しやすい会社の特徴を述べてきましたが、もちろんすべてに当てはまる必要はありません。いくつかでも該当していれば売却できる可能性はあるので、あくまで参考としていただければと思います。

また、近年、ウェブサイト上で売り手と買い手が直接出会える 「M&Aプラットフォーム」が普及してきています。M&Aプラットフォームは、仲介・アドバイザリー会社がコンサルタントをつけて支援することが難しい小規模案件(売却価格で数百万円から数千万円)で利用されることが多く、個人レベルでも買収できるM&Aとして、最近世間の耳目を集めています。

M&Aプラットフォーム業界はまだまだ黎明期ですが、一部のM&Aプラットフォーム事業者は公的機関である事業承継・引継ぎ支援センターとも連携しながら、とくに「小規模事業の黒字廃業を防ぐためのツール」として、今後よりいっそう普及していくでしょう

いずれにしても、いますぐではなく数年後の譲渡を検討している場合であれば、あわててM&A仲介会社やM&Aプラットフォームを利用する必要はありません。「どのようにすれば売却しやすい会社になるか」という観点から経営改善していくのがいいでしょう。

藤井 一郎 インテグループ代表取締役社長

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ふじい いちろう / ichiro Fujii

1997年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、三菱商事に入社。その後、米国サンダーバード国際経営大学院にてMBAを取得。2007年にM&A仲介・アドバイザリーのインテグループ株式会社を設立し、代表取締役社長(現任)に就任。中堅中小オーナー企業、上場企業、バイアウトファンドなどを顧客に、これまで100件以上のM&A成約に関与。2016年を最後に自ら案件を担当することをやめ、その後は、M&Aコンサルタントの採用・育成、コンサルタントに対する助言および経営業務に専念している。著書に、ビジネス交渉の分野でのベストセラー『プロフェッショナル・ネゴシエーターの頭の中―― 「決まる! 」7つの交渉術』がある。

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