「年収1200万円以上」の夫は育休を取るべき理由 来年から児童手当の支給がゼロになってしまう

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それでも筆者は育休取得をお勧めします。なぜなら、赤ちゃんの育児と出産直後の妻へのケアは、「金額に変えられない」からです。育休を取得した男性は口をそろえて「育休を取ってよかった」「貴重な経験だった」と言います。

男性の育休取得については、児童手当が改正される2022年10月と同じ時期に男性版産休制度がスタートします。子どもが生まれてから8週以内に4週間の育休を取得できる、また、分割取得ができるなど、現在の男性の育休制度より、育休を取得しやすくする新しい制度です。

男性が育休を取得できない大きな理由は職場の環境によるものです。4人に1人が育児休業でハラスメントを受けたという調査結果があるくらいですから、今の日本企業の職場の環境はよいとはいえないでしょう。この点については、労働者への育休取得の働きかけや職場環境の整備を会社に義務づけることなどが決定されました。少しでも職場が育休を取得しやすい雰囲気に変わることを願うばかりです。

育休取得でお金以外の貴重な経験を得る

このように男性育休が新しく生まれ変わろうとしていますが、残念なことに、育休手当の上限については変更される予定はありません。育休手当が育休中の所得保障だとすると、上限額オーバーの人にとってはその機能が働いていないことになりますが、財源の雇用保険財政にも課題はあるようです。今のところ上限額変更は期待できそうにありません。

でも、育休を取得できるのは生涯のうちに何度もあるわけではありません。「どうせ役に立たないから、家にいてほしくない」という夫にならないために、出産直後の貴重な育児経験をしなかったと後悔しないためにも、タイミングが合うなら、育休取得で所得制限対策を実行してみてはいかがでしょうか。

前田 菜緒 ファイナンシャルプランナー

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まえだ なお / Nao Maeda

和歌山県新宮市出身。大手保険代理店に7年間勤務後、ファイナンシャルプランナーとして独立。子育て世代向けにライフプラン相談、セミナー、執筆などを行っている。子連れでセミナーに行けなかった経験から、自分自身の相談やセミナーでは、子連れOK、子どもが寝てから開催するなど、未就学児ママに配慮した体系になっている。セミナーは、満足度96%で「世の中のお金の仕組みがわかりよかった」「内容の濃さに驚いている」など好評。子育て世代の人生設計を黒字化させることが好き。
2019年FP協会広報スタッフ、「FP相談ねっと」認定FP。FPオフィス And Asset公式サイト。

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