米中関係の悪化を防ぐシナリオ−−ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授


 一方で米国のゲーツ国防長官は、中国が台湾に武力行使することを牽制している。中国は米国が台湾へ武器を売却したことに抗議して、米国船の自国への寄港を制限した。ゲーツ長官はそのことについて中国を批判し、また中国の政府高官に対しても「米国が台湾に武器を売却することは、これまでの政策の延長線上にすぎない」「中国が防衛力を強化するかぎり、米国は台湾に武器を提供し続ける」と明言している。そのうえで同長官は、「中国は防衛費を増大させているが、それでも中国は米国の敵ではない。米中は多くの分野で今後、さらなる協力関係を築けるだろう」と述べている。
 
 米国がこの2点のシナリオに注意を払っているかぎり、米中関係が今後急激に悪化する可能性は少ないはずだ。加えて、中国が今後さらに経済発展を果たして福祉政策なども充実させていけば、台湾が国連に加盟しなくとも、両国は良好な経済協力の関係を築いていけるだろう。

外交上のリスクヘッジは過剰であってもいけない

 米国にとって中国との友好関係を維持することは、台湾の民主主義を守ることにつながり、国益にもつながる。だが台湾が独立して国連に加盟すれば、それは米中間の対立を生み出す危険性をはらむ。事実、中国国内では一部の人が「米国は中国に対抗するため台湾の独立を支援している」との疑念も抱き始めている。
 
 いま米国が中国を「敵」と見れば、中国は将来的にも米国の敵になる可能性は高い。中国が今後どれほどの経済発展を遂げるかは未知数だが、米中の友好関係をむやみに悪化させることはまったく意味のないことである。米国がとるべき政策は、あくまで米中関係悪化のリスクを避けるため、中国と台湾との経済的な協力関係を支援することである。さらに日本との同盟関係を強固にして、中国と日本と米国との間に力関係の偏りを生み出さないことである。
 
 このようにして外交上のリスクヘッジを図ることは、国際社会では当然の行為である。だが、こうした政策は過剰でもいけない。一方にとってはリスクヘッジのつもりでも、他方には脅威だと映る危険性もあるからだ。今後、米中が実際に交戦する可能性は少ないだろうが、両国は台湾問題を対立の引き金にしないように最大限の注意を払い続けるべきである。

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