中国が台湾に武力行使をしない3つの理由 「台湾有事が近い」とは中国側の論理から読み取れない

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日本経済新聞は「6年以内」とは言い換えれば「27年までに」という意味だと読み込みながら、「同年は習氏が国家主席としての3期目の任期を満了する前の年だ。米軍としては、習氏がその時までに中国共産党の宿願である台湾併合について決着をつけ、それを実績として4期目も狙うのだろうと踏んでいる」(「日本経済新聞」21年5月17日朝刊)と書いた。根拠はないわけではないが、これは勝手な想像に基づく「物語」である。

軍人が「最悪のシナリオ」をつねに組み立てるのは当然である。しかし「最悪のシナリオ」をもって「有事は近い」と騒ぐのは、まったく別問題である。

中国軍用機が台湾海峡の「中間線」を越境し、軍事的緊張が高まっているのは事実だ。ただそれを「台湾侵攻」の先駆けととらえるのは正しいか。中間線の越境は2020年夏、トランプ政権の閣僚級高官の台湾訪問や、アメリカ軍艦船の頻繁な台湾海峡通過、台湾への大量武器売却など、いずれも台湾関与のエスカレートへの「報復」だった。

アメリカ・イェール大学の歴史学者オッド・アルネ・ウェスタッド教授は、中国の行動を「国益を阻害する他国の動きに対抗している」(「朝日新聞」2021年4月20日朝刊)と、アメリカの行動への「受動的」な性格とみている。筆者はこれに同感する。これは米中対立を観察するうえでは重要なポイントだ。

なぜ武力行使を否定しないのか

では、台湾問題は中国にとってどのような課題なのか。中国にとり台湾統一は、帝国主義列強によって分断・侵略された国土を統一し「偉大な中華民族の復興」を実現する建国理念の重要な柱の一つである。

統一は国家目標だから、それを実現しなければ中国共産党は任務を放棄したことになる。中国の台湾政策は、建国直後から「武力統一」だった。しかし米中が国交を樹立し、改革開放路線に舵を切った1979年に、「平和統一」に路線転換した。転換したが、「武力行使」を否定しない政策は、現在まで継続している。そのことが中国は「好戦的」というイメージを増幅する。

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