イーロン・マスクも倣うロケット科学者の思考 先行き不安な人に勧める「第一原理から判断」

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取引成立の数カ月前には、マスクはすでにリオデジャネイロのビーチにいた。けれど、リタイア計画を練っていたわけではない。彼が読んでいたのは『Fundamentals of Rocket Propulsion(ロケット推進力の基礎)』だった。かつてペイパルを立ち上げた男が新たに目指したのは、宇宙だった。

マスクはスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ、通称スペースXを立ち上げた。火星移住と人類を惑星間種族にするという大胆な目標をかかげて。だが火星に宇宙船を送るロケットを購入しようとして愕然とした。アメリカ市場では、2機のロケットに1億3000万ドル(約136億円)と途方もない値がついていたのだ。

そこでマスクは、ロシア市場をのぞいてみることにした。しかし、ロシア側の提示額もミサイル1機2000万ドル(約21億円)という法外な価格だった。マスクの財力をもってしても、アメリカやロシアでロケットを購入することはできなかった。

マスクほどの富豪にとっても、宇宙開発企業を立ち上げるために支払うロケットのコストはあまりにも高すぎた。別の手を打たなければならないと、彼は痛感した。

アプローチが大きく間違っていたことを思い知らされたマスクは、諦めかけていた。しかし彼はやめるのではなく、最初の原理に立ち戻ろうと決めた。ロケットを扱うマスクはまさにロケット科学者の思考法で問題解決を行ったのだ。

「彼らがそうしているから」ではだめ

アメリカの伝説的な投資家ウォーレン・バフェットが言うように、「ビジネスにおいて最も危険なことばは、『ほかの誰もがやっている』だ」。多くの人はそうした“猿真似”をしてみんな我先にと競争の真っただなかに入っていき、押し合いへし合いしているのだ。

ロケットを購入しようと思ったとき、マスクは初めて自分がそうした競争のなかにいることに気づいた。彼の思考はほかの人が過去にしたことに悪い意味で影響を受けていた。だからマスクは物理学の勉強に立ち戻り、最初の原理を判断のよりどころにしようと決めたのだ。

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