4.25トリプル選全敗、高まる「反自民」のうねり 与党内に広がる「菅では選挙を戦えない」との声

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今回のトリプル選全敗の背景には、地方選挙における自民党の退潮があるとみられる。各種世論調査での政党支持率をみると、自民は一貫して主要野党の支持率合計を大きく上回り続けている。にもかかわらず、地方選挙で自民苦戦が目立つのは、「有権者の間で反自民の空気が強まっている証拠」(選挙アナリスト)でもある。

今回最も注目された広島も、コロナの影響を差し引いても投票率の低下が際立った。自民県連は「従来の自民支持者の多くが棄権に回り、無党派層は積極的に野党に投票した」と分析。背景には、安倍前政権以来の政治とカネの問題だけでなく、コロナ対応でも国民の命より政治的思惑を優先する菅政権への反発があると指摘する。

全敗でも「菅降ろし」は起きず

ただ、トリプル選全敗でも自民党内の菅降ろしの動きは顕在化しそうもない。岸田氏をはじめとするポスト菅の有力候補らが、「軒並み挑戦権を封じられている」(閣僚経験者)からだ。「選挙で勝たないと政権は続かない」として、再選狙いで衆院解散への意欲を隠さない菅首相に対し、正面から挑みかかる実力者も現状では見当たらない。

野党も足並みの乱ればかりが目立つ。一部メディアの調査でも、「菅首相より枝野幸男立憲民主党代表のほうが嫌われ度が高い」との結果が出ている。だからこそ、与党内に「結局、次期衆院選は菅首相のもとで戦うしかない」(自民幹部)とのあきらめムードも漂う。

菅首相は26日午前、解散・総選挙の時期については「新型コロナウイルス対策に最優先で取り組んでいく考えに変わりはない」と改めて早期解散断行に慎重な姿勢を示した。広島での敗北の原因となった政治とカネの問題についても、「いろんな指摘をいただいている。自民党総裁として重く受け止めたい」と淡々と語った。

自民党内ではすでに、「菅首相は東京五輪・パラリンピックの開催にこぎつけ、その直後の9月に解散して一定の議席を確保することで、自民総裁選を無投票にする戦略」(有力幹部)との見方が広がる。当面、「すべてはコロナの感染状況次第」(自民長老)という状況が続きそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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