中国の「アップルカー」目指すシャオミの野望 アリババやファーウェイなど様々な企業も参入

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ではシャオミの弱点やリスクは何か。後発であることは先に述べた通りだが、同社にとってより大きな不確定要素は、ファーウェイ(華為技術)の動向だ。

シャオミは2011年に最初のスマホをリリースし、破竹の勢いで成長。一時は中国首位、世界トップ3に躍り出て、2015年には7000万台を販売した。だが、その後は右肩下がりとなり、2018年の販売台数は5200万台まで減少した。

スマホが普及するにつれ、中国メーカーのファーウェイがハイエンド端末、OPPO、vivoが若者向け入門機でシェアを高め、「コスパが売り」のシャオミが相対的に埋没したからだ。インドなど新興国では相変わらず強さを見せるものの、目標のハイエンド化は道半ばにある。

シャオミの2020年12月期の売上高は2459億元(約4兆1016億円)と前年比19.4%増加、調整後純利益は前年比12.8%増の130億元(約2168億円)だった。売り上げの60%を占めるスマホ事業の売上高は同24.6%増の1522億元(2兆5569億円)だった。直近の数字は絶好調だが、その要因は同社自身の功績というよりは、ファーウェイがアメリカの規制で身動きが取れなくなったという「敵失」が大きい。

ファーウェイが短期間で息を吹き返せば、リソースがスマホ、EVに分散されるシャオミにとっては大きな圧力となる。

ファーウェイも自動車部門を創設

また、ファーウェイも自動車部門を新設し、新たな事業の柱に育てようとしている。スマートカー部門で技術を統括する李暁駿CAO(Chief Architect Officer)は4月22日、日本人有識者向けの説明会で「ファーウェイのスマホは2万元(約33万円)でも売れている。自動車を造ったなら高くても売れるだろう。自動車メーカーに安心してもらうために、造らないが」と誇った。

シャオミは「人気の中国ブランド」としてアップルやテスラとはすみ分けできるが、ファーウェイが製造に参入した場合はスマホ同様に巨大なリスクとなる。

「高コスパメーカー」というシャオミのわかりやすさは、市場が未成熟な時期は追い風になるが、消費力が向上し、EV市場が成熟期を迎えるステージに入ってもブランドイメージを変えられないなら、スマホ事業と同じ罠に落ちるかもしれない。加えてシャオミの業績もEV参入も、ファーウェイの動きに大きく左右される。

40歳でシャオミを創業した雷CEOは51歳になった。自動車事業は「人生のすべての成果と名誉を懸けた、最後の重要プロジェクト」だという。成功するかは未知数だが、車両のコンセプトすら明かされない段階で、既に台風の目になっているのは間違いない。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
Twitter: @sanadi37

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