スペイン「オリーブオイル業界」知られざる窮状 アメリカによる報復課税で輸出量が激減した

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スペインで5月からデジタルサービス税が導入されようとしている中、高関税の影響でアメリカへの輸出が激減しているるオリーブオイル業界の現状に、再び注目が集まっている(写真:Angel Navarrete/Bloomberg)

スペインで5月1日から3%の「デジタルサービス税(俗に言うグーグル税)」が導入されることになった。これに伴って、アマゾンやグーグルなどIT企業大手は、課税分を顧客側に転化させる方向に動いており、グーグルはスペインで同ネットに掲載する広告費用として2%の値上げを決定。アマゾンも4月から販売手数料を3%値上げしている。

スペイン紙「エル・パイス」によると、政府は当初、この課税は2019年1年間で12億ユーロ(約1440億円)の税収につながると見ていたが、昨年2月、閣議で同法案が承認された時点では9億6800万ユーロ(約1160億円)に下方修正。当初の見込み税収から20%引き下げたのである。下方修正した背景には、アメリカがその「報復措置」として、スペインからの輸入品に高関税を課す意向を和らげる狙いがあったから、とみられている。

ところが、スペイン政府の意に反して、今年1月に就任したバイデン新政権は4月にスペイン製の靴・履物に対して、現在10%の関税を25%に引き上げる意向を明らかにした。

靴・履物製造業者が猛反発

これに対して、スペインの靴・履物製造業者はスペイン政府にこのデジタルサービス税の適用廃止を要求。関税が賦課されるようになれば、同業界の直接雇用1500人と間接雇用5000〜6000人が危険にさらされるようになると、電子紙「OKディアリオ.エス」(4月10日付)は指摘する。

昨年のアメリカ向け輸出額は1億5160万ユーロ(約182億円)と、同業界の7%占める(輸出量は350万足)ことから、高関税による悪影響は計り知れない。同紙によると、すでに、今年8月から9月にアメリカの顧客に納品が予定されていた注文がすでにキャンセルになったり、保留になったりしている例も出てきているという。

スペイン靴・履物製造連盟のマリアン・カノ会長は、同紙の取材に対して「なぜわれわれの業界が商業戦争の犠牲にならねばならないのだ」と憤慨。また、履物製造業者のメッカとなっているバレンシア靴・履物企業経営者連盟は、この影響で生産が他国に移されるようになることを懸念しているという。

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