「自由と民主主義の実験場」アメリカの夢と悪夢 サブカルチャーにある「超大国の憂鬱を解く鍵」

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アンダーセン:もちろん、多くのアメリカ人は他者の自由を可能にするために他者に自由を強いることができると信じています。「私たちの自由」によって、他国で社会的な権威が与えられるかのように思ってしまうのです。「自由を強いる」という表現は、実は矛盾していますよね。
ガブリエル:おっしゃる通り、国を爆撃することによって人々に自由をもたらすことができるなんて、矛盾していますよね(笑)。もちろん、実際効果があったケースもありました。それも際立った効果が。だからこの類の話は、「成功モデル」になります。そう、ヨーロッパでは確かにうまくいったように思います。私はドイツ出身ですが、みんな幸せです(笑)。
アンダーセン:それは事実です(笑)。思い返してみると、現在の世界では、特に第二次大戦は行われるべき戦争だったのか否か、論争がありますよね。

 

丁々発止のやり取り、映像でその発話のリズムまで感じることができた方なら、さながらアメリカのテレビ文化全盛時代のトークショーの一場面を見るように思われたのではないか。ユーモアをまじえつつ、諧謔味溢れるジャブの応酬。こんなスパーリングを前にしたら、歴史の浅い国=アメリカの特殊性に思いを馳せ、ガブリエルをつい判定勝ちにさせたくなる。

しかしだからと言って、軍事攻撃まで付いてくるおせっかいなまでの「自由」の押し売りなど、アメリカのカルトな一面ばかりに目を奪われ、調子に乗ってガブリエルと一緒になった気分で「突っ込み」ばかりを入れてもいられない。「理念」によって建国を志した国の根幹にはあったはずの、大事な価値観も忘れるわけにはいかないからだ。

「自由」と「民主主義」、その「実験場」としてのアメリカの存在感、その原点にある精神は、決して軽んじてよいことにはならないだろう。常にチャレンジャーとして変革を目指す、「自由」を求める力は、少し衰えを感じさせるとはいえ、今なお新しい風を世界に運び続けるのも事実だ。

こうして、アメリカ人とドイツ人のスリリングな対話の狭間で、日本人として、僕らはどう考えるべきなのか? 遠景に見えたやりとりも、ブーメランのように自分たちの今現在、日常の思考のベースへの問いかけとして返ってくる。

戦後、歴史の悪戯で日本とも深い関係にあるアメリカの存在、その関係性をどう位置づけるのか? 重い問いが潜んでいる。そうしたことを考えるためにも、アンダーセンが提示した「ファンタジーランド」というコンセプトは、面白い。そして今回の「世界サブカルチャー史」でも、アンダーセンの洞察は、番組の1つの柱となっている。

中国との対立も「夢」の力で乗り切る?

 さて、アメリカが守り世界に広めたいと願ってきた「自由」とは? 国内での分断に加えて、この一年以上のコロナをめぐる混乱の中、国際情勢にあってもアメリカが焦りを感じ始めている。ご存じの通り中国の存在だ。

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