京急「ほぼ新型」車両、これまでと何が違うのか 窓の配置から「妻面」の仕上がりまで妥協せず

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車両の構成は付随車2両を電動車で挟んだ「2M2T」。4両編成で2M2Tは新1000形の1・2次車以来になる。京急の車両担当者は「編成全体の軽量化を目指した」といい、制御器の性能向上によりMT比率を見直すことができたと説明する。今までよりモーターが少なくなったため、主電動機の出力は190kWhと、15次車(4両編成)の155kWhから上げた。

しかし、こだわったのは機能面だけでない。ステンレス車は耐久性に優れるが、外観が銀色のままでは無機質な印象を与え、たくさんの小さな溶接痕が目立ってしまうのが難点だ。

側面はステンレス車に特有の溶接痕を目立たなくした(記者撮影)

同社はこの数年、本来はそのままでも差し支えがない車体に、わざわざ塗装を施して、赤い車内にクリーム色の窓周りの外観の「京急らしさ」を重視してきた。

今回の新造車両(20次車)はそのこだわりに輪をかけている。無数にある溶接痕をパテで塗って見えなくした。側面に取り付けた車番や「KEIKYU」のロゴはコーポレートカラーの水色で、ホームドアがあっても見やすい高い位置に取り付けてある。

見えない部分も譲れない

さらに通常は乗客の目が届かない妻面(連結部分)も溶接痕が目立たないようにして塗装。雨どい管やパンタ配管は清掃がしやすいよう、一般的な丸管でなく角管とした。総合車両製作所の川上さんは「京急さんは洗車の頻度が多く、これもこだわりの『京急の色』を出すためだろう」と見る。コスト面では「オーダーメイドが多いのでサスティナとしてはお高くなった」と話す。

目にする機会が少ない妻面の美しさにこだわった(記者撮影)

外観は塗装でピカピカに滑らかになり、アルミ車体と変わらないほどの仕上がりとなっている。それでもステンレス車体を採用するのは、やはり内部の腐食に強く、耐久性の面でアドバンテージがあるのが理由のようだ。

新造車両には、座席指定列車とイベント列車という、通勤・観光両面の需要を最大限取り込もうとする京急の考えが随所に見受けられる。果たして、ほぼ新型車両とも言える新1000形20次車は、同社の歴史に残る名車となるか。

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