スクープ!住友重機械が機関銃生産から撤退へ 日本の防衛産業から撤退が相次ぐ切実な事情

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国産機銃の価格は外国製の約5倍であり、財務省からも改善あるいは輸入に切り替えることをたびたび要求されている。また海自は2016年に住友重機械工業のMINIMIが高いために、外国製に切り替えることを検討したこともある。

陸自は現在M2および、74式機銃の後継も検討中であり、これらが外国製に切り替わる可能性は大きい。また機関砲や火砲を生産している日本製鋼所は機銃ビジネスに興味を持っていると同社の関係者は語っている。同社は近年自社開発のRWS向けに動力付きの20mm機関砲を開発し、海上自衛隊に提案したが、この機関砲は採用されなかった。

複数の業界関係者の情報によれば住友重機の機銃生産撤退は決定事項だという。事実、防衛省の機銃調達も大きく減っている。

この背景にはいくつかの理由がある。

発注が小単位、高価に

まず防衛省しか顧客がいないのに、小規模な小火器メーカーが乱立し、それぞれを維持するために発注が少単位、高価になってきたことがある。高価だから調達数が減るという悪循環に陥ってきた。

拳銃と短機関銃はミネベアミツミ、小銃、迫撃砲、対戦車無反動砲などは豊和工業、機銃と20ミリ機関砲は住友重機、それ以上の口径の機関砲や戦車砲、榴弾砲、護衛艦の主砲などは日本製鋼所が担当して棲み分けてきた。

だがミネベアミツミの短機関銃である機関拳銃は単価が44万円と高価格でしかも性能不良で途中で調達が中止され、自衛隊向けの新型拳銃はH&K社にSFP9の輸入に決定し、残るのは警察用の拳銃ぐらいで事業の維持が難しいだろう。

豊和工業にしても89式の更新である20式小銃の契約はとれたが、84ミリ無反動砲M2はライセンス生産だったが、これにかわるM3は輸入に切り替わり、近年採用された60ミリ迫撃砲も輸入である。81ミリ迫撃砲と120ミリ迫撃砲は生産が続いているが生産数は少なく、導入が予定されている自走120ミリ迫撃砲用の迫撃砲は輸入に切り替わる可能性もある。このためこれまた防衛部門の売り上げは減っている。

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