コマツが「隠れたドル箱」の改革急ぐ切実な事情 建機に次ぐ稼ぎ頭の鉱山機械で進む戦略転換

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そこでコマツが石炭向けからシフトを図るのが、地中から鉄や銅、金などの比較的硬い鉱物資源(ハードロック)を地中深くから掘り出す、坑内堀りと呼ばれる採掘用の機械だ。ハードロックは製造業の復調も手伝い、コロナからの需要回復が早い。とくに銅は車などの電動化の進展といった新技術の拡大で、モーターの電線やワイヤー類向けの需要増が予想される。

鉱山機械は資源の硬さやその堀り方で使用する商品が異なるため、新たな分野に進出するハードルが高い。ただ、コマツは2017年、同用途の機械を扱うアメリカのジョイ・グローバル社(現コマツマイニング)を約3000億円で買収していた。この買収が奏功し、早期のシフトが可能となっている。

コマツ本体の部品を搭載し強化

現状の鉱山機械は稼ぎ頭だけに、いかに価格競争に頼らずハードロックの坑内堀り分野を拡大できるかが、営業利益率回復の要ともいえる。付加価値向上へ取り組むのが品質強化だ。今後は同分野の主力であるコマツマイニングの機械に、コマツ本体が開発・生産するエンジンやトランスミッションといった中核部品を搭載することで、耐久性の向上や修理対応の容易化などを図る。

また、従来の工法よりも高効率に採掘が行える工法とのセット販売なども活用し、鉱山の運用そのものに踏み込んでいく。

ドル箱事業の鉱山機械分野で構造転換を推し進めるコマツ。収益性の回復に向けて、早期に石炭分野の生産能力を適正規模まで引き下げると同時に、ハードロック分野でのシェア拡大という結果を残せるかが問われている。

中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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