しかし、日本の会社は「利益の最大化が最終的な目的だ」という前提にいまだに納得していない。納得していないどころか、そんなことは思いもよらず、最近は「株主がうるさいから、以前よりも利益を優先しなければならない」という認識なのである。
このように、日本の会社の利益率が低い理由は単純で、利益を目的としていないからである。日本に老舗が多く、長寿会社(長寿企業という言葉は間違っている)が多いのは、利益の最大化ではなく「三方よし」を社会的基盤とし、事業の継続を絶対的な使命としているからである。
なぜ日本の会社だけ特殊なのか?
「家族経営の企業だから一族の繁栄のために事業の継続は当たり前だ」と思うかもしれないが、これがぜんぜん違う。日本の会社だけ特殊なのだ。
理由の第1としては、一族の資産価値の最大化、永続化が目的ではなく、事業の継続が目的だから、というのがあげられる。一族よりも事業が優先なのである。これが欧州のファミリービジネス、同族大企業と大きく異なる点である。
有利な事業に事業変更をするのは例外的であり、だからこそ、豊田自動織機を源流とする現在のトヨタ自動車は、歴史に残るぐらい例外的な奇跡なのである。
さらに、驚くべきことに「婿養子システム」が存在する。この場合、跡取りは娘婿である。血縁よりも事業を継続するために、外の血をルーティンとして必ずといっていいほど導入する。
血のつながった息子よりも事業が重要なのである。こんなことは世界中、どこを見てもない。これは筆者の仲間とともに研究をプロジェクトとして実践したことがある。その結果は論文としては「Yupana Wiwattanakantang et.al. Adoptive expectations: Rising sons in Japanese family firms, 2012」としてまとめており、有名になったこともある。
第2に、この結果、事業を変更することをよしとせず、あくまで祖業にこだわるから、事業ポートフォリオという発想がない。「これから儲かる事業に乗り換える」ということもしない。
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