漫画「進撃の巨人」完結で知る担当編集者の秘話 新人の漫画家と編集者が二人三脚で歩んだ軌跡

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勢いそのままに、2020年12月よりNHK総合にて放送開始となったTVアニメ『進撃の巨人』The Final Seasonが、世界中でシリーズ最高の視聴数を獲得している。2015年に日本でもサービスをスタートしたNetflixなど、動画配信サービスが世界中で拡大しているのも大きな追い風となっているようだ。

日本で生まれたカルチャーの代表としての「漫画」の海外市場の開拓について、川窪はその難しさを感じつつも今、一歩を踏み出そうとしている。

アニメに続き「漫画」でも海外市場の開拓に乗り出す『進撃の巨人』(出所:講談社)

「漫画文化は日本固有のもの、コマ割りや連載形式などかなり珍しい文化です。漫画をそのままの形で世界に出していくのは難しいので、アニメという形で出す。アニメーションはわりと世界共通になっているんです。映像、グッズ、イベント、体験、のような形で世界に出していくのはもっともっとやっていくべきだと思っています。

実際、個人的にアニメの委員会や知り合いに相談して、アメリカなどで『進撃の巨人』の商品をもっと流通させるアイデアを進めようとしている段階です。日本と比べて海外は供給が追いついていないというか、「欲しい、見たい、読みたい、でもどこで買えるの?」という状況があります。

市場は確実にありそうなので、しっかり整理していきたいという気持ちがあります。講談社で、マガジンで、『進撃の巨人』でやれたらいいなと思っています」

時代が変化しても変わらない矜持

『進撃の巨人 4月9日最終回 結末を見届けよ!カウントダウン企画』がネット上で開催され、最終回発売まで毎日、特別コンテンツを配信。3月30日“主人公エレンの誕生日”に諫山から最後の原稿を受け取り、入稿を終えた川窪は「11年7ヵ月お疲れ様!」とTwitterで感謝を綴った。

漫画家志望の専門学生と新人編集者が出会い生みだした物語は、国内で社会現象になり、そして海を越えてハリウッドにまで繋がった。そんな刺激的な日々からひと区切り……するのかと思いきや、感傷に浸る間もなく川窪の『進撃の巨人』の仕事は続くという。

川窪慎太郎(かわくぼ しんたろう)/編集者。2006年に講談社に入社、『週刊少年マガジン』編集部に配属される。配属1カ月目に諫山創の持ち込みに応対し、その後のデビューを支援。2009年の『別冊少年マガジン』創刊時より『進撃の巨人』を担当(撮影:梅谷秀司)

「昨日もタイアップの提案がありました。2022年の何月頃でと話があって、2022年も普通に『進撃の巨人』の仕事やってるんだなって(笑)。単純に、終わったー! って言ってブッ倒れたい気持ちというか、俺の青春終わった、みたいになりたいのも本音。

でも一方で諫山さんの才能を考えると、読まれている量が少ないと思っている自分もいるんです。まだまだやるべきことがあります」

インタビューの最後、川窪の口から出てきたのは、時代が変化しても揺るがない編集者としての「矜持」だった。

「漫画を描くことが何のためにされる作業なのかっていう出発点が僕にとっては一番大事。どんな漫画を描けば作家にとっての自己実現になるのか、そういうことを隣で一緒に考えて引き出してあげるのが編集者の姿だと思うんです。時代が変わっても変わらない、僕のスタンスです」

そして、『進撃の巨人』に対しても、揺るぎない「愛情」をみせた。

「『進撃の巨人』は自分の物語に置き換えられる、世の中の希望や絶望のすべてを描いています。僕を信じて、普段、漫画を読まない方も読んでみてほしい」

そう言い残して、川窪は仕事場(物語の世界)へと戻っていった。(敬称略)

池田 鉄平 ライター・編集者

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いけだ てっぺい / Teppei Ikeda

Jリーグ、国内、外資系のスポーツメーカー勤務を経て、ウェブメディアを中心に活動。音楽一家で育ち、アーティストとしてインディーズでアルバムリリースも経験。スポーツ、音楽、エンタメを中心に取材活動を行っている。

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