SNSがトランプ危機を引き起こしたカラクリ サイバー法の権威・レッシグ教授が問題を指摘

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フェイスブックは、友達の美しい写真やみんなの幸せな生活を見せてあなたに安心感を与えるようにデザインされています。あなたは自分も幸せな生活を公開しなければならないと感じ、できるだけ多く情報を公開します。すると、それと比例して広告エンジンは向上し、どの広告があなたにとってフィットするかを予測できるようになります。そして広告エンジンがよくなれば、あなたはさらに引きつけられて、もっと自分の情報を明かすということになっていきます。

ネット広告は人間の進化上の弱点を突く

ローレンス・レッシグ(Lawrence Lessig)/アメリカ・ハーバード大学ロースクール教授。1961年生まれ。アメリカ・ペンシルバニア大学卒業、英ケンブリッジ大学で哲学修士号、米イェール大学で法学博士号を取得。2016年米大統領選挙に出馬するなどアクティビストとしても活動。著書に『CODE』『コモンズ』『REMIX』『彼らは私たちを代表していない』など(写真:本人提供)

より多くの情報を公開することで、より多くの人と関わることもできるようになりますが、残念なことに、提供された情報がより過激・扇動的で、必ずしも真実でない場合ほど、私たちはそれをより共有したいと思うようです。

それと類似した、よい例えは食べ物です。私たちは塩分、脂肪分、糖分などの多い加工食品の誘惑に弱いですね。これは人間の体が食べ物のあまりない時代に合わせて設計されてきたからです。こうした人間の進化上の弱点を突くことに食品業界は長けています。食べ物が豊富にある現在、アメリカの国民の多くは肥満になりました。

情報も同じです。フェイスブックだって何も外国ハッカーの介入や陰謀論を助長したいと思っているわけではありません。たまたま、それが彼らにとって最大の利益になるから、そうしているのです。私たちはこのような影響を受けやすく、その影響は広告というビジネスモデルによって引き起こされています。それがわかったなら、次はインターネットがこのようなインセンティブを持たないように、異なる広告モデルを持つか、別の収益源を見つけることが必要になります。

――「フィルターバブル(プラットフォーマーのアルゴリズムによって、ユーザーは見たい情報だけに囲まれて、見たくない情報は見なくていい環境が作られること)」というインターネットの特徴は、昔から議論されていました。しかし、言ってみればそれは音楽や車、文学などの趣味・嗜好の世界の話だと思っていました。民主主義の危機につながる影響力にまで拡大するとは……。

思い出してください。1990年代にアメリカオンライン(AOL、世界最大のパソコン通信会社からインターネットプロバイダーに転身。2017年にアメリカ・ベライゾン傘下のアメリカ・ヤフーと統合)が全盛だった時代にも、ディスカッションスペースやチャットルームといった、人々が何かを話すことができる場所はありました。しかし、そこでは人々に個人情報を公開させて、それを広告収入につなげるということはしていませんでした。

当時もさまざまな情報が共有されて過激なものはありましたが、私たちを狂わせるようなやり方ではありませんでした。つまり、今日起きていることは、インターネット空間の頂点に広告のビジネスモデルが君臨しているからです。アメリカでは(自由度の高い「表現の自由」を規定する)憲法修正第1条があるため、その影響が大きく出ています。

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