党内保守派に秋波、ポスト菅狙う岸田氏の苦悩 与野党全面対決の広島再選挙は「お手並み拝見」

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そうした中、岸田氏が3月26日夜、自身のツイッターに「敵のミサイル発射能力そのものを直接打撃し、減衰させることができる能力を保有することが必要」と投稿したことも波紋を広げた。中国や北朝鮮によるミサイル攻撃抑止のための敵基地攻撃能力の保有を訴える内容だったからだ。

敵基地攻撃能力保有については、安倍晋三前首相が2020年9月の退陣直前に、年末までの結論を求める談話を発表した。しかし、公明党の反発もあり、菅首相は判断を先送りした。

岸田氏は「1人の党員としての考え方」と語るが、次期総裁選出馬に向けて「安倍氏に代表される党内保守派に秋波を送った」(自民長老)と受け止められている。

保守派へのすり寄りにしか見えない

ただ、故大平正芳、故宮澤喜一両元首相らに代表される「軽武装・経済重視」のリベラルな政治路線を堅持してきたのが宏池会(岸田派)だ。同派内では「宏池会らしくない発言。自分の考えはないのか」(岸田派長老)との批判が噴き出す一方、自民党内には「公明を怒らせるだけだ」(幹部)と、広島再選挙への悪影響を指摘する向きもある。

岸田氏は3月30日に安倍氏と会談。同25日に設立された選択的夫婦別姓制度推進派による議員連盟への出席も見送った。こうした岸田氏の動きについて、党内では「総裁選のカギを握る安倍氏や麻生太郎副総理兼財務相へのすり寄りにしかみえない」(自民長老)との声も広がる。

広島再選挙の勝敗には岸田氏の総裁選への挑戦権が懸かる。岸田氏も連日地元に張り付いて、街頭演説や集会で西田氏への支援を訴えている。ただ、当初の自民党の情勢調査では「西田氏が一歩先行」という結果だったが、ここにきての地元メディアの情勢調査では「宮口氏の追い上げ」が目立っているとされ、自民県連も危機感を募らせている。

菅首相は、トリプル選挙のヤマ場となる4月中旬に訪米し、バイデン大統領との首脳会談に臨む。自民党内の一部には「外交で成果を挙げれば、トリプル選挙で全敗しても連休前に解散を断行。5月衆院選で勝ってチャラにすればいい」(二階派幹部)との声も出る。

西田氏が敗れると菅首相への打撃も大きいが、「岸田氏が失脚すれば、結果的に菅首相の再選へのプラス要因にもなる」(無派閥有力議員)とのうがった見方もある。まさに「広島特有の仁義なき戦いの様相」(自民県連)で、「平時の首相候補」と揶揄される岸田氏は「自らの殻を破れるかどうか」(岸田派長老)が問われることになる。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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